「5千万円問題」をなんとか収束させたい猪瀬直樹都知事(67)だが、早くも“ポスト猪瀬”をにらんだ動きが始まっている。
次期都知事選に向けて動いているのは、かつて「総理大臣に最も近い」と言われた舛添要一「新党改革」前代表(65)だ。
舛添氏は2001年の参院選に自民党公認で出馬し、初当選。07年の安倍改造内閣で厚生労働相として入閣を果たし、福田、麻生政権でも続投したが、自民党が下野した後の10年4月に離党、新党改革を結成した。
だが、「思うように党勢拡大できなかった」として、今年7月の参院選には出馬せず、「しばらく充電する」と言って浪人中だ。
舛添氏と親しい自民党秘書がこう語る。「舛添さんは99年の都知事選で石原慎太郎さんに敗れて以降、ずっと都知事になるという夢をもっています。コロコロ代わる総理大臣と違って、都知事は政策さえしっかりやれば2期8年はやれる。扱う予算も年間6兆円とケタはずれ、というのが理由でした。7月の参院選に出なかったのは、16年に任期満了となる都知事選に向けて資金などを蓄える狙いもあったようです」。
そんな舛添氏が、東京五輪を誘致し、16年都知事選でも再選確実と言われていた猪瀬知事のまさかの転落に、色めきたつのも無理はない。さっそくテレビやラジオに次々と出演し、アベノミクスや外交政策について持論を展開している。
11月27日に都内のホテルで開催された舛添氏の政治資金パーティーには、自民党の石破茂幹事長や民主党の岡田克也前副総理、公明党の上田勇衆院議員らが駆けつけ、口々に、「日本国が舛添さんを必要とする日は必ず来ます」(石破氏)、「また政治の世界で、ご活躍されることを期待しております」(岡田氏)などと持ち上げた。自民党の河井克行衆院議員が、「皆さん、来年とか早い時期に、舛添さんが活躍することがあるかもしれません」と知事選をにおわせると会場は大盛り上がり。一足早い決起集会の様相だった。
終了後、舛添氏に次期知事選出馬について聞いた。「いやいや、議員を辞めたばかりなんで、しばらくはゆっくりさせてください。充電中です」。表情を緩ませながらも、慎重な回答。だが、猪瀬知事の一連の問題については、「あの説明では、誰もわからないでしょう。都民も納得していないのでは」と厳しく批判した。
自民党のベテラン議員が今後の展開をこう予測する。「本当に猪瀬さんが辞職して選挙となった場合、舛添さんに対抗できる人はいないでしょう。安倍晋三首相も無視できない。いずれ会談をして、『党推薦』という形に落ち着くのではないか」。
たとえ猪瀬知事が辞職せず任期満了まで務めたとしでも、「もう続投はない」(ベテラン都議)という見方が圧倒的。東京五輪の「おもてなし」の顔が、猪瀬氏でないことだけは間違いない。
※週刊朝日 2013年12月13日号