元外務事務次官の薮中三十二氏(65)の“振る舞い”に、古巣である外務省が困惑している。
「ある海外の事業を巡って助成金をつけるよう、繰り返し外務省に連絡してきていました。元次官が特定の事業に肩入れするのは、あまり感心しないのですが……」(外務省関係者)
薮中氏といえばアジア大洋州局長時代の2003年、北朝鮮の拉致問題をめぐる6者協議の交渉担当者として一躍脚光を浴びた。
「要領がよくフットワークも軽いので、順調に出世しました。その上ロマンスグレーのイケメンで、女性にモテました。10年に退官しましたが、省内にはいまでも彼に心酔している職員がいるほどです」(同前)
現在は立命館大学で教える傍ら、民間企業の顧問などを務めている。そんな薮中氏がご執心の事業とは?
「今月23日からホーチミン市で開催される展覧会です。今年は日本とベトナムの外交樹立40周年。ある芸術家が同市美術館を使って開催するのですが、その会場の賃料の一部を助成してほしいと、薮中さんが外務省に働きかけたのです」(同省幹部)
結局、同省の外郭団体である国際交流基金が賃料9175ドルのうち、5500ドルを負担。主催する実行委員会の日本側委員長には薮中氏が就任し、会場の下見にも訪れている。果たしてこの芸術家とは何者なのか。外務省関係者が明かす。
「愛知県在住の50歳代前半の女性で、和服美人です。約20年前からベトナムの風景をテーマにした作品を発表し、昨年は外務大臣表彰も受けています。次官時代の薮中さんと京都で対談している様子がネット上に流れていたり(現在は閉鎖)、薮中さんの退官後は鼎談(ていだん)の様子が新聞に載っていたりしています」
薮中氏のこの“振る舞い”を、外務省はどう受け止めているのか。
「助成金申請書の書き方を教えてほしいという連絡もありました。元次官ですから断れませんよ。ある課ではこの女性の名前が出るだけで、みな嫌な顔をします。もう少し考えて行動してほしいです」(同前)
こうした後輩たちの指摘に、薮中氏はこう反論する。
「この件で外務省に電話したことは一度もありません。そういううわさが外務省で流れているとすれば残念です。助成決定後の2、3週間前に、展覧会のポスターを作製する際、現地の実行委から『助成』という英語がわからないとのことで、国際交流基金に一度だけ確認の電話をしたことはあります。助成金を出すかどうかは、基金の外部委員会が審査するので、外務省は関係ありません」と全否定。また女性との関係についても、「個人的な関係は全くない。文化交流を独力で20年やってきて、05年にベトナムから文化功労賞を授与されるなど、高く評価されている方です。私は名古屋財界も含めた応援団の一人です」と、こちらも否定した。
だが、同省幹部は言う。「基金は外務省の政策に沿って助成を決めています。外務省が関係ないなんて、次官まで務めた人がよく言えますよ」。
李下に冠を正さず。外務省顧問の肩書も持つ薮中氏だからこそ、くれぐれも誤解されぬよう……。
※週刊朝日 2013年11月29日号