ついに、行政が動いた。本誌は前号(10月25日号)で、欧州産のジャムから基準値を上回る放射性物質が検出されたと独自調査に基づき明らかにした。これを受けて、東京都が10月18日、このジャム5184個の回収を輸入業者に命じたと発表したのだ。新聞各紙やテレビのニュースでもこの事態は報じられた。
問題のジャムは、取材班が都内のスーパーなどで購入したイタリア産(原産地はブルガリア)のブルーベリージャム「フィオールディフルッタオーガニック フルーツスプレッド」。民間の検査機関に依頼して行った放射能測定で、同じ賞味期限の3個から、いずれも国の基準である100ベクレル/kgを上回る最高164ベクレル/kgのセシウム137が検出された。27年前のチェルノブイリ原発事故による汚染が、いまだに続いている実態が明らかになったのである。
本誌は前号が発売された15日、商品を扱う店を管轄する東京都墨田区の保健所に情報提供した。保健所は同区内のスーパーに職員を派遣するなどして、店頭から商品を撤去するよう要請。都の検査機関で検査をした結果、本誌が指摘したとおり140ベクレル/kgのセシウム137が検出された。このため輸入業者のある渋谷区は、ジャムの輸入元の「MIE PROJECT」に賞味期限2015年10月17日の商品の回収を命じたのである。
同社が日本で販売するブルーベリージャムは、ネット通販でも人気の商品だった。自社有機農場産の果実を使ったジャム商品群は「イタリアで最も売れている」とあり、カスタマーレビューには「最高のジャム」などの高評価が並んでいた。
保健所の担当者によると、今回のような情報提供で放射性物質の行政検査が行われた例はないという。市民が放射能に汚染された食品を見つけて通報した場合、同様の対応をするのだろうか。
本誌が指摘しても、当初、厚生労働省は「民間の測定結果をもってすぐに処分はできない」と動かなかった。保健所も「週刊誌の記事に出ただけでは動きづらい」と、なかなか重い腰を上げようとしなかった。
食の安全を考える会の野本健司代表が指摘する。
「通報に対し行政検査をしなければ、危ない食品がそのまま販売されてしまう。東欧産ブルーベリージャムからは基準値を超えるセシウムが頻繁に検出されているのだから、輸入規制などの措置が必要ではないか」
そもそも検査を受ける輸入食品は全体の1割以下。知らずに汚染食品を口にしている可能性は高いのだ。
※週刊朝日 2013年11月1日号