あまり報じられていないが、今年9月、日本に輸入されたスウェーデン製ブルーベリージャム「ブルーベリーエキストラジャム」から、食品中の放射性物質の基準値(100ベクレル/kg)を超える140ベクレル/kgのセシウムが見つかった。ウクライナ産ブルーベリーを使ったジャムで起きた食品衛生法違反事例として、この一件は厚生労働省のホームページ上でも確認できる。
実はこのジャム、欧州家具を販売するスウェーデンのイケアがプライベートブランドとして開発し、世界中の店舗で販売しているものである。イケアの広報担当者が言う。
「当社は口に入るものの安全性を特に厳しく管理しているため、セシウムが含まれていたことにとても驚いています。どこで混入したのか、輸入元を通じて詳しい調査をしています」
違反となったイケアブランドのブルーベリージャムは、厚労省が全量廃棄か積み戻しを指示したため、消費者の口に入ることはない。だが、これ以前に輸入した同じジャムは、「安全性が確認されたもの」(イケア)として今も販売を続けているというのだ。イケアのケースと同じように国内で流通する欧州食品に、セシウムは含まれていないのだろうか。
取材班はイタリア、フランス、ベルギー、デンマークなど欧州各国産のブルーベリー加工品をはじめ、イチゴなどのジャム類、キノコ類、チーズ、生ハム、オリーブ、パスタ、ワインなど70種類以上の食品を都内食料品店やネット通販で購入し、シンチレーション検出器で独自測定を試みた。するとなんと、ブルーベリーだけでなく、乾燥キノコから300ベクレル/kg近いセシウム137が検出されたのだ。
念のため東京都内の民間測定所「CRMSせたがや・市民放射能測定所」に持ち込み、高精度のゲルマニウム半導体検出器で再測定してもらったが、やはり高い値が出た。セシウム137が164.4ベクレル/kg(検出限界6.3、以下同)という基準値超えの値を示したのは、イタリアから輸入されたF社のオーガニックのブルーベリージャムだ。
三つの同じ商品を調べたところ、賞味期限が2015年10月17日と表記されている他の二つの商品からも、149.9ベクレル/kg(6.4)、141.4ベクレル/kg(5.5)と基準値を超えるセシウムが出た。
輸入業者のM社に取材すると、この商品に使われているブルーベリーはブルガリアの有機農場で採れたものだという。
「ベリー製品は消費者から『大丈夫ですか』といった問い合わせも多くあります。安全第一なので、昨年9月に当社で検査をしましたが、そのときは134が10ベクレル未満、137は61ベクレルと基準値内だったので安心していました。イタリアの加工業者も年に2回、放射性物質の検査をしていると聞いていたのですが……」(M社)
ジャーナリスト・桐島瞬
※週刊朝日 2013年10月25日号