異常な“恐怖支配”の全貌がついに明かされる。
角田(すみだ)美代子元被告(兵庫県警本部の留置施設で自殺=当時64)が主導したとされる「尼崎連続変死事件」。発覚の端緒となった大江和子さん(当時66)の死亡を巡る事件で、傷害致死などの罪に問われた3被告の裁判員裁判の初公判が、9月25日に神戸地裁であった。
3被告は和子さんの長女の香愛(かえ=45)、次女の裕美(ゆみ=42)とその元夫の川村博之(43)。この事件ではすでに、美代子元被告の義理のいとこの李(角田)正則被告(39)に対して、死体遺棄などの罪で懲役2年6カ月の実刑が確定している。
3被告側は事実関係を認めたが、同時に美代子元被告らによる暴行などで心神喪失に陥っていた、と無罪を主張。公判ではその凄まじい実態が示された。
法廷の裕美被告は、両耳が大きくふくれあがって変形し、眉のあたりにも傷があるのが見えた。美代子元被告らの暴行によるものという。
検察側の冒頭陳述によると、美代子元被告が川村被告と知り合ったのが2009年4月。鉄道会社にクレームをつけ、対応したのが川村被告だった。そこから私的な付き合いが始まった。
川村被告は10年4月に退社。もちろん美代子元被告が強要したためだ。また、川村被告が浮気をしていると妻の裕美被告に吹き込み、夫妻は同年11月に離婚。香愛被告も加わった「家族会議」で、美代子元被告らによる恫喝や暴行が繰り返された。裕美被告は美代子元被告から自殺を強要され、高層マンションに連れていかれたが、事なきを得た。
その際、母の和子さんが「よかった」と話したことから、美代子元被告は「情けをかけた」といって和子さんの顔面をサンダルで殴り、「身内のことは身内で正せ」と家族にも和子さんへの暴力を強要したのだ。
3被告は美代子元被告の指示で、新聞紙などで「しばき棒」をつくり、和子さんに暴行するようになった。水は1日500ミリリットル、食事は1~2回に制限するなど虐待も加えられた。
和子さんが衰弱してもなお、美代子元被告は構わず暴行。最後は、うめき声をあげる和子さんに対し、娘である香愛、裕美両被告にまで暴行させ、川村被告には「そのままやらしとき」と指示した。和子さんは11年9月11日に死亡した。
川村被告の親族が語る。
「美代子は本当に無茶なことを求め、従わないと殺されかねなかった。信じがたい事実を、きちんと法廷で話してほしい」
判決は10月31日に言い渡される予定だ。
※週刊朝日 2013年10月11日号