予定通りか、先送りか。安倍晋三首相は消費増税をどうするか、10月中旬までに表明するとされる。その判断材料となる経済指標が相次いで発表された。6月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比0.4%の上昇とデフレ脱却の兆しを見せた。4~6月期のGDP(1次速報)は年率換算で名目2.9%、実質2.6%の伸びとなった。「景気条項」の目安を実質で上回ったが、名目では届かない微妙なところだ。
日本の金融市場を動かす海外投資家も財政再建を重視し、増税を催促している。金融業界では、そんな見方が支配的だ。
「現在の景気の状況では、増税を見直す理由はどこにもありません」(みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミスト)
先ほど触れたGDPの伸びは、アベノミクスによる個人消費の好調さと円安による輸出の伸びに支えられている。
「増税法が成立した昨年8月の時点では、これほど景気がよくなっているとは誰も予想していませんでした。アベノミクスはまだ始まってもいませんでしたから。これで増税に踏み切れないと、『景気回復に自信を持っていないのでは。何か深刻な問題を隠しているのでは』と外国人投資家に勘ぐられかねません」(高田氏)
増税に踏み切らなかった場合は、「株価はドーンと下がるでしょう。もともと、海外では日本の政治家の評価は低い。アベノミクスで評価が少し高まってきたのに、指導力のなさを再び示しかねない」(BNPバリバ証券の中空麻奈投資調査本部長)。
もはや増税の「外堀」は埋められている状態なのだ。
※週刊朝日 2013年9月6日号