親の家をゴミ屋敷にしないための「モメない親孝行片づけ術」を伝授しよう。講師は収納アドバイザーの宮城美智子さん(65)。75歳の吉田敬子さんの自宅にお邪魔し、宮城マジックを見せてもらうことにした。

 2畳半ほどのクローゼットには、山のような洋服に、6段の収納ボックス、布団にスーツケース。まさに足の踏み場がない。「もったいなくて捨てられないというより、見るのが嫌で部屋に行かないの」。

 そう眉を寄せる吉田さんに、「大丈夫ですよ~」と朗らかに宮城さんが声をかける。「いる」「処分」「?」と書いた段ボールを3つ用意した。クローゼット内の収納ボックスなどをすべて外に出し、洋服の選別をするように吉田さんに伝えた。

「これはいらない。これもいらない。これはいる!」

 思い切りよく捨てていく洋服は、シャネルなどの高級ブランド品が多い。思わず、「捨てちゃうんですか?」と声をかけると、「リサイクルに出す」との答え。その横で、宮城さんはクリーニングの袋や洋服カバーをはずし、ハンガーをすべて薄くてすべらないものに取り換えていく。

「どの服かわからなくなるから、カバーは全部捨ててね。ハンガーは薄いものにするだけで、収納がぐっと増えるの。あと同じ種類のハンガーだと、見栄えもきれいよ」(宮城さん)

 300万円したという毛皮のコートに、「どうしよう、着ないけどもったいない」と吉田さんが迷う。宮城さんは、「じゃあ、これは取っておきましょう」。表彰状を捨てるか迷ったときは、「私は全部捨てちゃったわ」と宮城さんが言うと、「本当? じゃあ捨てる」とスムーズに「処分」ボックスへ入った。吉田さんの声のトーンやしぐさなどで、どの程度執着しているかを判断し、宮城さんの声かけは変わるようだ。

 3時間ほどで、ハンガーや洋服など、大きなゴミ袋5袋分と、スーツケース1個、洋服の収納ボックス一つがゴミとなった。段ボール3箱分のブランド服が、リサイクル行き。クローゼットは奥まで見渡せるようになり、見違えるほどすっきりしている。

「わあ、嬉しい!」

 それまで「疲れた」としんどそうだった吉田さんの声が弾んだ。

週刊朝日 2012年12月28日号

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