激化していたイスラエル軍とパレスチナ武装勢力「ハマス」の戦闘は、あわや地上戦に突入という間際に、エジプトの仲介で11月21日(現地時間)、ひとまず停戦が成立した。その中で、世界が驚嘆しているのが、人口密集地に飛来したロケット弾500発弱のうち、421発を迎撃した防空システム「アイアンドーム」の凄まじい能力だった。軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏が報告する。
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アイアンドームは、比較的射程の短いロケット弾や砲弾を、対空ミサイルで迎撃するシステムである。日本の航空自衛隊が導入した米国製のPAC‐3にコンセプトが似ているが、PAC‐3は中距離弾道ミサイルを対象としているため、兵器システムとしては別のカテゴリーに分類される。
同類の運用コンセプトの兵器としては、高速の弾幕で迎撃する機関砲システムや、いまだ開発中のレーザー迎撃兵器などが挙げられるが、要するに、SFアニメの“バリアー”のようなものといってもいいだろう。
かつて、日本がミサイル防衛を導入しようとした際、「飛んでくる弾丸を、ピストルで撃ち落とすようなもので、どうせ実現できない」などと批判する声もあったが、市街地で9割を迎撃したアイアンドームの成功率は驚異的なものだ。
開発したのは、イスラエルの有力軍事企業「ラファエル社」である。イスラエルは国家を挙げて、国産兵器の開発に取り組んでおり、小火器やミサイル、レーダー、無人機から、戦車、弾道ミサイル迎撃システムまで、世界最先端をゆく軍事産業大国でもある。その防衛産業を支えるのは高度な技術力であり、民間のIT産業も発達している。今回のアイアンドームの成績の高さに、早くも購入を検討する国が出てきている。
※週刊朝日 2012年12月7日号