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 近年、子宮内膜症を「予防できる病気」としてとらえる動きが出てきている。2008年、副作用がほとんどない低用量ピルが子宮内膜症の治療薬として保険適用となったことが、きっかけの一つだ。子宮内膜症の予防や不妊についてくわしい慶應義塾大学病院産婦人科教授の吉村泰典医師に話を聞いた。

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「月経がある女性なら、月経痛があるのは当然」。日本では長いことそう考えられてきました。しかし月経のたびに痛みに悩まされ、学校や会社を休まなければならない状況は異常です。月経痛は、普通はないものなのです。

 子宮内膜症は、良性では数少ない進行性の病気です。30代で多く発見されますが、ごく早期の病変はすでに10~20代のときに出現している可能性が高いと考えられています。

 米国では、慢性的に骨盤痛がある高校生の20~50%に子宮内膜症があるというデータもあります。このため米国では、月経困難症(月経時に起きる強い下腹部痛などの症状)があり、鎮痛剤が効かない場合は、思春期から低用量ピルの服用を開始します。その後結婚するまで飲み続け、妊娠、出産を経て授乳が終わったころに、服用を再開します。

 日本ではホルモン剤を長期間服用することに対して、敬遠される傾向があります。しかし低用量ピルに関しては、長期間飲むことで悪影響が出るというデータはありません。血栓症や乳がんのリスクは多少高くなりますが、月経量が減少し、子宮内膜症の症状が改善したり、卵巣がんの発症リスクが低くなったりなど利点のほうが大きいといえるでしょう。

週刊朝日 2012年10月19日号