最後に「シャーロック」の話をもう少し。心に残った2話があり、これが「相棒風味」だったのだ。一つはとんでもないパワハラ野郎が出てくる「社会問題摘発物」。もう一つは戦後の貧しさが関係する「忘れてはならない歴史物」。そのようなテーマがありながら、面白い謎解きものに仕上がっている。それも、相棒風味。
社会問題物は、第5話。パワハラ野郎の下で働かされた若手社員の悲劇を描いていた。圧巻は、母親を演じた若村麻由美さん。「シャーロック」は毎回、犯罪周りに豪華ゲストを配していてこれも「相棒」方式だが、若村さんは別格だった。
母としての愛情、自分のキャリア、さまざまなものを結集して罪を犯す。終わってみれば、哀愁が残る若村さんの一人舞台。「相棒」の屈指の名作「ミス・グリーンの秘密」(season8、2009年)における草笛光子さんの演技を思い出した。
歴史物は、子役が大活躍した7話。山城琉飛くんが孫で、祖父役に伊武雅刀さん。伊武さん演じる男は秘密を抱えていて、背景には戦後の貧しさがある。伊武さんはさすがの演技なのだが、私が引かれたのは山城くんの可愛い&達者な芝居。「相棒」には、中学生になった“子ども店長”こと加藤清史郎くんが出演した「BIRTHDAY」(season11、2013年)という超名作がある。山城くん、将来有望とみた。
「相棒」は現在、season18を放送中。土曜ワイド枠で「警視庁ふたりだけの特命係」が放送されたのが2000年だから、もうすぐ20年になる。ずっと高視聴率を維持しているのは、ドラマを支える視点が確かだからだろう。その視点こそが「社会問題摘発」だったり「忘れてはならない歴史」だったりするのだが、そこに名女優や名子役を配し、心に残る名作に仕上げている。だから信頼され、チャンネルを合わせる人が減らない。
「シャーロック」は、そこをちゃんと分析している。しかも「相棒」より若いバディにして、棲み分けもできている。だけど、どうも視聴率は下がっているらしい。ディーンさんのバイオリンのシーンなど、再考の余地はあるような気がするけど、どうかしらん。

