その際たる功績が2007年~11年までレギュラー放送し、今でも特番で放送される「あらびき団」(TBS)だ。かつて番組に出演したことがあるパフォーマーが語る。
「『会って知り合っちゃうと、番組でおもいっきりいじれないから』という理由で、東野さんが出演タレントとは収録時間が、かぶらないような仕組みになっていました。なので、直接のやりとりはなかったのですが、若手のネタはめちゃくちゃ詳しいですね。ローカル番組をチェックしてネタを見ていますし、気になればいろんなところで話していただける。それがテレビ局の人に伝わってテレビ出演につながることもありました。最近だと、キングオブコントで優勝したどぶろっくとも、ツイッターなどでやり取りしていました。末端の芸人でも目をかけて、才能があれば引き上げてくれる方だと思います」
現在の吉本は、ダウンタウンのマネージャーだったスタッフたちが上層部入りして影響力を強めているが、彼らと大阪時代から一緒にやってきた今田や東野だからこそ、芸人たちと会社側のコミュニケーション役や仲裁役が務まるのかもしれない。
TVウォッチャーの中村裕一氏は、2人の若手時代を振り返りつつ、現在の状況についてこう分析する。
「かつて今田さんも東野さんも、若手時代に伝説のバラエティー番組『ダウンタウンのごっつええ感じ』で先輩であるダウンタウンから強烈な洗礼を浴びていました。今田さんはダウンタウンから喧嘩ドッキリを仕掛けられてマジ泣きしたり、東野はその髪型をかた焼きそばに見立てられて熱々の中華あんを何度もかけられたりと、今では絶対に放送NGのパワハラスレスレのギャグで相当メンタルを鍛えられたと思います。その経験がまさに現在の後輩に対する手厚い思いにつながっているのではないでしょうか。確かに、突き抜けたギャグは爆発的な笑いを生み出しますが、継承するのも難しく、必ずしもすべての芸人がついて行けるわけではありません。2人はどうにか生き残りましたが、その過程で脱落していった芸人も数多いと思います。長期的視点で見れば、今田さんや東野さんのような先輩が後輩を育てていくのでしょう。強烈なムチャぶりが当たり前だった時代を体で覚えつつ、現代のコンプライアンスにも対応できる貴重な存在として、これからもお笑い界を支えてほしいですね」
多くの芸人たちがしのぎを削るお笑い界で、彼らのような大御所一歩手前の芸人たちが、ときに喧嘩を仲裁し、ときにオチた人間に手を差し伸べてくれる。まさに“ウラ番長”ともいえるこの2人が、いまのお笑い界を支えているのかもしれない。(今市新之助)