とはいえ、痩せ姫同士の交流はメリットのほうが大きいように思う。共感しあったり、励ましあったりすることがそれぞれの癒しや気づきにつながるからだ。ネットがなかった時代は、各自がもっと孤独に陥りがちだった。SNSの発達により、大変なのは自分だけじゃないという安心がもたらされるようになったのは、最近の特筆すべき傾向である。

 ほかには、当事者が出演するドキュメント映画や当事者が描く漫画が生みだされ、メディアで紹介されたりもしている。つらさを発信することで、自分のプラスにしていこうという姿勢は、世間の認識を変えてもいくだろう。

■摂食障害にとって真夏は鬼門

 ところで、摂食障害の人にとって、真夏は鬼門といえる。健康な人でもこたえる暑さに、栄養不足の体で堪えなくてはならない。体温調節の機能も落ちているし、下剤や利尿剤の使いすぎで脱水などにも陥りやすい状態だ。できれば、スポーツドリンクや野菜・果物系のジュースの摂取をおすすめしたい。

 また、暑さは注意力を散漫にし、判断力も鈍らせる。投げやりになって、ともすれば死に誘われたりもしがちだ。体調面以外でも、なるべくリスクを避けられるような慎重さや冷静さを大事にしたい。チューブ吐きについても、胃穿孔などを起こす危険性があり、たとえ慣れている人であっても要注意だったりする。

 以上、令和元年の摂食障害事情についてまとめてみた。すでに述べたように、痩せ姫の「痩せたい」は「死にたい」にも「生きたい」にも通じるもので、つらいせめぎあいというほかない。そこをなんとかしのいでいけるよう、願うばかりである。

宝泉薫(ほうせん・かおる)1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』エフ=宝泉薫名義の『痩せ姫 生きづらさの果てに』など。

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