ここのところ、妙に月が大きいなと感じていました。
数日前から、深夜、帰宅していると、空一面にかかっている雲の切れ目から顔を出す月の光が妙に毒々しくて、なんだか不気味だなと思っていたのですが、特に12月12日の夜七時頃、ビルの向こうに見える満月のあまりの大きさに思わず足を止めてしまいました。

なんでも12月12日は、月が地球に通常よりも遙かに接近する「近地点(きんちてん)」に達したのだとか。東京は晴天だった上に見事な満月、空に君臨する夜の女王の風情もむべなるかなというところです。

その見事さにラリー・ニーヴンの『無常の月』というSF短編を思い出しました。
空に異常な明るさの満月が輝く、人類最後の夜の話です。
主人公と恋人は月のあまりの明るさにはしゃぎ夜の町へと繰り出します。やがて彼らは気づきます。なぜ、こんなにも月が輝くか。それは反射している太陽の輝きが異常だから。超新星化した太陽は、地球の裏側を焼き尽くし、すでに昼間側の全ての生命は死滅している。やがてくる夜明けこそ滅亡の時なのだ・・・。
10代の時に読んだのですが、見事な満月を見ると思い出す、印象深い短編です。

その思いは僕だけじゃなかったようで、その日のブログには月の輝きとともに『無常の月』に触れている人をチラホラと見かけました。

そのリンクをたどって行く先で見つけたのが、2ちゃん風『無常の月』
2ちゃんねるのスレッドの書き込み風に、『無常の月』のアイディアを展開しているのです。
最初に「見ろ、おまいら、きれいな満月だぞ」という感じで書き込みが始まり、驚く奴、はしゃぐ奴の中から、やがて真相を知る者が書き込み、「そういえばアメリカのサーバーが落ちてる」「海外のチャット相手が返事しない」などという発言が増え、「俺達は最後までこのスレッドで書き込んでいよう」「ローゼン麻生から発表があるぞ」「次のスレッド立てるか?」等と展開していく、非常によくできた二次創作でした。

ああ、なるほど。これは二次創作だけど、アイディア次第では2ちゃんスレッド形式で短編が書けるなあと感心しました。
ひょっとしたら、もう若い作家が書いてるかもしれませんね。
以前『電車男』というのがありましたが、あれは本当に2ちゃんのスレッドで展開されたものだったので、一人の作家が書くフィクションの技法としては新しいのではないでしょうか。

よおし、俺もこの手でやってみますか。
まずは『アルジャーノンに花束を』を日記形式で。
いや、それは元からそうだから。