市長「とにかくハンコ早くもろてこい。手段選ばんでええから、手押さえてハンコついてもらえ。後で訴えられたら損害賠償はお前らで払ったれ。責任取れ! 不始末の。とにかく工事はしますから、はよせえ! 工事。人死んだら遅い、この1,2年の間に。たった1軒だけ残してもうて。何年かかるねん。まだ3年もかかるような話やないかこんなもん。今6月14日やから、今月末目途でハンコついてもうてください。それついてもうてなかったら、7月3日付けで辞表もらう。二人だけじゃないで、担当者もクビにするから。かめへん。許せん。今月中に頭下げて説得してハンコついてもらってください。どんな仕事やるかは任せます。頭を下げるのか、説得するのか。『後1軒だけですと。ここは人が死にました。自転車に巻き込まれて女性が死んでこの事業は進んでいます、と。もう7年経ちました、と。そういった中で立ち退きをご協力いただきたいと。状況としては他はもうご協力いただいて、うちのほうでも金額提示が遅くなっていますけど、ご理解をお願いいただきたい。2年3年経っても結果は変わりません』と。(略)。説得するんや」

部長「わかりました」

市長「頭下げて土下座して、頭擦り付けて帰ってくるな! 畳に頭擦り付けて『ハンコ押してもらうまで帰れません』とそういう話じゃこれは!」

部長「わかりました」

市長「時間は戻らんけど、何のためにやっとる工事なの! 安全対策でしょう?」

部長「何よりも本当に」

市長「あっこで人が死んだんでしょう? だからやるんでしょう? 巻き込まれて死んだ角やないか。あの角が立ち退かんかったら工事できひん。あそこが中心や! 私が行って頭下げて土下座でもしますわそんなもん! 市民の安全のためやろ! 市民の安全のためにしんどい仕事をやって安全な道路を作ろうとしているんでしょう? それはある意味誇りでしょうが! しんどい仕事やから尊いんですよ。相手がややこしいから仕事が美しいんでしょう! 後回しにすんなよ! 腹立つのはそこやから! 何の仕事しとんねん。あっこの工事ができてこそ安全対策になるんでしょう。そのために道路としてもやっているんでしょう。2年延びるということは単に2年延びるんじゃないんですよ。その間安全じゃないんですよ! 単に金のつり上げ交渉に関わっても仕方ない。人が亡くなったと、大義がないと」

部長「わかりました」

市長「とりあえず目途は6月末で、そこでまとまらなかったら私が行って頭下げますわ。頭ぐらいなんぼでも下げますわ。市民の安全のためやないか! 言いたいのはそれや。そのために役所はしんどい仕事するんや。頼みますよ」

部長「はい。わかりました」

(今西憲之/AERA dot.編集部・福井しほ)

※市長の発言に個人を特定できる情報が含まれていたため、一部編集しております

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