私の指導教官でもあるヘブライ大のシロニー名誉教授は日本の天皇についての著作があり、知日家でも知られています。シロニー名誉教授によると、それぞれの天皇の御代は、その人間性と時代的な背景によって形作られるといいます。明治天皇は近代化、大正天皇は進歩、昭和天皇は戦争と復興、そして平成天皇は民主主義といった具合に天皇の人間性と君臨した時代で、世界から見える日本の形があるというのです。
シロニー名誉教授はまた、天皇は文化の鑑であるとも指摘しています。少なくとも1200年は、天皇は政治的、軍事的、経済的、司法的な権力を欠いていましたが、その代わり、宗教的な儀式を司り、和歌を詠み、芸術を追求するなど日本の文化的発展において重要な役割を担ってきました。このような時代において、天皇は、世界から日本は魅力的で興味深いという「ソフト・パワー」をもたらしました。その力は大きなものです。
2013年8月、私は安倍内閣の国会を見学しました。国会の初日、平成天皇が国会開会式でお言葉を述べられました。国会議員、内閣、最高裁判事を前にした天皇の声は議場に響き、そして優しく聞こえました。日本が過去から築いてきた天皇制によって支えられている近代民主国家として最良の制度を備えている姿を見た気がしました。
◯Nissim Otmazgin(ニシム・オトマズキン)/国立ヘブライ大学教授、同大東アジア学科学科長。トルーマン研究所所長。1996年、東洋言語学院(東京都)にて言語文化学を学ぶ。2000年エルサレム・ヘブライ大にて政治学および東アジア地域学を修了。2007年京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修了、博士号を取得。同年10月、アジア地域の社会文化に関する優秀な論文に送られる第6回井植記念「アジア太平洋研究賞」を受賞。12年エルサレム・ヘブライ大学学長賞を受賞。研究分野は「日本政治と外交関係」「アジアにおける日本の文化外交」など。京都をこよなく愛している。
