トレード組でも成功者がいた。最も印象的だったのが、榎田大樹(阪神西武)。開幕直前の3月にチームを移ると、開幕から先発ローテの一員として連勝街道を突き進み、6月3日には古巣・阪神からも白星をマーク。最終的に自己最多の11勝(4敗、防御率3.32)を挙げてリーグ優勝に貢献。昨季までのプロ7年間で計13勝だった男が、移籍を機に大きく人生を変えてみせた。いったい、阪神は何をやっていたのだろうか。

 同じくトレード組の西田哲朗(楽天ソフトバンク)も新天地で輝いた。楽天でここ2年間、11試合、22試合と大きく出番を減らしていた中で選手層の厚いソフトバンクに移籍したが、そこで出番を掴んで72試合に出場。ポストシーズンではラッキボーイとして大活躍し、CSファイナルステージでは5試合中4試合にスタメン出場して12打数7安打、日本シリーズ第6戦では値千金の決勝スクイズを決めて日本一に貢献した。

 その他、岡大海(日本ハムロッテ)、伊藤光(オリックス→DeNA)などは移籍直後から出番は得たが、成績的には目立たずに成功とは言い切れず。中継ぎの岡本洋介(西武→阪神)は34試合に登板し、山下斐紹(ソフトバンク→楽天)は控え捕手として43試合に出場したが、トレードの交換相手(西田)が活躍したためにやや肩身が狭い。藤岡貴裕(ロッテ→日本ハム)、松田遼馬(阪神→ソフトバンク)、飯田優也(ソフトバンク→阪神)といった投手陣は環境の変化も好転せず、移籍1年目で結果を残すことはできなかった。

 メジャーからの復帰組も明暗が分かれた。7年ぶりの日本球界復帰となった青木宣親(メッツ→ヤクルト)は、5月ごろまでは対応に苦しんで打率2割半ばに甘んじていたが、6月以降は本来の打棒が蘇り、快音を連発。127試合に出場して打率.327、10本塁打、67打点の成績は期待以上だった。一方、開幕直前に10年ぶりに復帰した上原浩治(カブス→巨人)は調整不足と左膝の痛みに苦しみ、36試合で0勝5敗、防御率3.63と不完全燃焼。シーズン終了後に左膝を手術し、球団から自由契約が発表された。

 移籍は、間違いなく選手にとってチャンスである。だが、それを生かすも殺すも、結局は自分次第。今オフ、渦中の選手たちの決断と決意に注目したい。

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