人間の墓の中に“副葬品”として動物の遺骨を同居させることへの抵抗感を抱く人は少なくない。
そこで、成田さんはこうしたトラブルを回避できる人間とペットの合葬墓を開発した。同じ区画に人間用とペット用のカロートを分けて納骨できるデザインの墓(プラスペット墓)を販売したのだ。感応寺で契約されたプラスペット墓は2018年6月現在で24基に上る。
成田さんがペット供養を開始して13年。この間に、感応寺を取り巻くペット供養環境はどう変化してきたのか。成田さんは、当初は一番リーズナブルな葬儀プランが依頼者のほとんどを占めていたが、最近では高めのプランに人気が集まってきている、と説明する。
「人間の葬式はどんどん簡略化される傾向にありますが、ペットはより手厚く見送る傾向が見られます」
過去には、人間の葬式に置き換えても立派、と思えるような犬の盛大な葬式もあったという。きちんと喪主をたて、ペットオーナーでつくるコミュニティ仲間や友達だった犬らが多数参列した。参列者は全員喪服で、香典も受け取る。香典袋には、友達の犬の名前が差し出し主として書かれていた。喪主は香典返しを用意する徹底ぶりだった。
1度の葬式だけで供養を終えるのではなく、前日に通夜をしたり、葬儀の後の初七日、四十九日や百か日、一周忌、三回忌などの法要をするケースも増えてきたという。都会における人間の葬式では、年忌法要なども簡略化される一方だが、ペット供養の世界はむしろ逆にふっているようだ。
成田さんは言う。
「“うちの子”のために、できるだけの供養をしたい、という強い思いを持たれる飼い主さんが多いように感じます。飼い主にとってみれば、ペットは我が子と同じ。ワンちゃん、ネコちゃんを亡くされた時のショックは人間の家族を亡くした時と、なんら変わりません」
人間の場合は、子どもの頃に反抗期があったり、親子の間で打算や確執が生まれたりして、愛と憎しみが同居することが少なくない。しかし、ペットは飼い主を裏切ることはない。愛情を注いだだけ家族への癒し、という手段で返してくれる。人間とは異なり、死後も遺産相続で争うこともない。ひょっとして、悲しみの「質」は、人間よりもペットの死の方が純粋かもしれない。