ただ、全体的に見ると非常に技術は高いバッターであることは間違いない。投手のレベルが低い台湾球界とはいえ、ここまで安定して高い打率を残すことができるのもうなずける。先述した前回のWBCの壮行試合で放った3安打は則本、牧田和久(当時西武)、岡田俊哉(中日)と異なる3人投手のいずれも変化球をとらえたもの。第4打席では増井浩俊(当時日本ハム)の決め球のフォークを見極めて四球も選んでおり、この結果からも対応力の高さがうかがえる。守備、走塁は日本のレベルに入るとどこまでになるかはまだまだ未知数だが、一昨年は24盗塁、昨年は16盗塁をマークしているようにある程度脚力を備えていることもプラス要因だ。

 所属しているLamigoとは昨年から5年契約を結んでおり、日本球界に移籍するかはまだまだ不透明な部分が多いものの、この段階からこれだけ報道されるのも不思議でないくらいの実力を持った選手である。今年で25歳とまだまだ若く、最初は厳しいマークに苦しんだとしても、今後の成長でそれを乗り越えることも十分に考えられる。これまで台湾出身の選手といえば投手という印象が強かったが、王がそのイメージを覆す可能性は大いに秘めていると言えるだろう。台湾の『大王』は果たして本当に日本球界入りするのか、このオフの動向に引き続き注目したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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