東尾修「敵チームとにこやかに談笑は…」いまだに覚える違和感とは

週刊朝日
 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、「2段モーション」解禁などルール緩和で審判団の力量が試されるという。

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 11球団が宮崎、沖縄に散らばり、日本ハムも米アリゾナ州スコッツデールでキャンプインした。どうしても最初は新戦力、とりわけ投手のブルペン投球の話題が多く出てくる。だけど、その球数を見ると、100球を超えるような投手は、ほとんどいない。

 今の投手は「準備のための準備」がしっかりしているから、もう1月の自主トレ期間中に、体は仕上がっている。むしろ、パワーアップしているというべきかな。私が現役時代の頃は、まず疲れを抜くということがオフの主眼であって、完全に体を動かさない期間があった。今は違う。体を動かさない期間と同じだけ元の状態に戻すのに時間がかかることがわかっているから、主力も若手もほとんど休むことなく、体を動かしてきている。

 そうなると、ブルペンで「投げ込みデー」を作ることは減るよね。私の場合は2月10日くらいまでに踏み出した左足の尻の部分の張りが出て、そこから投げ込みを行いながら張りをとっていった。2月下旬になってようやく打者と対峙(たいじ)する……という方法だったが、トレーニング理論も進歩して変わった。今の選手たちには、本当に頭が下がる思いだよ。

 自主トレ期間では選手が他球団の選手と交流し、トレーニングの意見交換を行う。昔は他球団の選手と交流なんてなかったから、当初はおかしいなと感じたが、これも時代の流れ。若手は球団の垣根を越えていろんな技術を盗めるということだ。野球界全体の発展には、不可欠なことなのかもしれない。ただ、公式戦の試合前に、敵チームとにこやかに談笑している姿をファンの方々に見せてしまうのは、いまだに違和感を覚えるけどね。

 話はずれたが、みんな2月1日には体はできあがっているから、投手なら「体作りのため」の投げ込みは必要なくなる。あるとすれば、体の変化による微細なバランスをブルペンでチェックしていくこと、新球に対する精度を磨くこと、くらいかな。キャンプでも毎年驚かされるのが、主力投手であっても“もう試合で投げられるんじゃないか”と思う投手の多いことだ。

 ただ今年は、投手にとっては考えさせられる外的要因がある。それは「2段モーション」を反則投球とはしないとのルールブックの変更と、セットポジションのときのボーク判定の緩和だ。国際基準の流れをくんだものであろうが、これは投手にとって大きな武器となり得る。特にセットポジションで一度グラブを完全に静止する必要があったが、その緩和がなされるなら、一塁走者のスタートを遅らせることにもつながり、盗塁の危険も減らすことができる。キャンプでしっかりと審判団と意見交換し、「これなら大丈夫」のラインを見つけたら、投手にとっては大きいよ。

 投手と打者、投手と走者は紙一重の中で勝負をつけている。一番難しいのは「緩和」という線引きだよ。審判団からすれば、その線引きをどこまでキャンプ、オープン戦で画一化できるか。各球団とも神経をとがらせる部分だろう。大リーグを見ていても、セットポジションの際に一度静止していなくても、ほとんどボークをとられない。

 私も宮崎、沖縄のキャンプを巡りながら、その点にも注目していきたいと考えている。

※週刊朝日  2018年2月16日号
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