以上の結果から、レム睡眠が不足しているとき、砂糖を食べたくなる欲求は、前頭前皮質によってコントロールされているらしいことがわかった。一方、前頭前皮質の活動を抑えても、脂質の摂取量はマウス(B)と(C)では変わらなかったので、脂質の食べ方をコントロールする部位は、別のところにあると考えられるという。脳の特定の部位と食欲の関係がこのようにわかってくると、肥満を防ぐ研究がいっそう進むかもしれない。
■レム睡眠だけは増やせない!
さて、レム睡眠が不足すると太りやすくなるのなら、睡眠時間が不足するときにもレム睡眠を減らさないようにすれば、太りやすくなるのを防げるように思われる。
レム睡眠の時間は、上のグラフでわかるように目覚めるまでの7時間ほどの間に、1.5~2時間ごとに4回ほどやってくる。何とかこのパターンを変えて、レム睡眠だけを増やすことはできないだろうか。ラザルス准教授にそう尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「そういう薬が開発されれば多くの人が喜ぶと思いますが、今はありません。グラフをよく見ると、レム睡眠の割合は朝に近づくほど多くなっていますね。ですから7時間ぐらいしっかり眠らないと、レム睡眠不足になるのです。夜更かしはやめて、早く寝るようにしましょう」
(サイエンスライター・上浪春海)
【レム睡眠とノンレム睡眠】
眠りは、寝ている間の脳と体の活動の状態から2種類に分けることができる。「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」だ。レム睡眠は、「脳は起きているときに近いが、体は休んでいる状態」、ノンレム睡眠は「脳は休んでいるけれど、体にはある程度の力が入っている状態」といえる。
レム睡眠のレム(REM)というのは、目がかなりのスピードで上下左右に動くことを表した英語だ。実際、レム睡眠中の人を観察すると目玉がさかんに動いている。
夜ベッドに入るとしだいに眠りが深くなっていくが、このときはノンレム睡眠。ところが1時間半・時間ほど経つと、眠りが浅くなってきて、このときレム睡眠の状態になる。そしてまたノンレム睡眠になって眠りが深まり、またレム睡眠になる。このようにして、一晩の間に4回ぐらい、ノンレム睡眠とレム睡眠とを繰り返している。
※月刊ジュニアエラ 2017年10月号より

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