次のアメリカ大統領は誰になるのか─。4年に1度の大統領選挙(大統領選)が、すぐ目の前に迫ってきている。お祭りのように盛り上がっているが、一体どんなしくみで決め、どんな人がなるのだろう。世界の大国・アメリカのトップは世界中に影響力をもっているだけに、その結果に注目が集まっている。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、朝日新聞国際報道部・杉崎慎弥さんの解説を紹介しよう。
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アメリカ大統領選挙は、オリンピックと同じく4年に1度行われる。日本の選挙はほぼ日曜日だが、大統領選の一般投票は「11月の第1月曜の翌日」と定められている。キリスト教で、日曜日は安息日のためという説が有力だ。今回は11月8日である。
大統領選は1年近くも、お祭り騒ぎになる。今回は、「女性初」、そして「夫婦でも初」の大統領を目指す民主党のヒラリー・クリントン氏(68)と、大富豪でまったく政治経験がない「異端児」と呼ばれる共和党のドナルド・トランプ氏(70)という対決になり、注目を浴びている。
派手な「政治ショー」になる理由は、選挙のしくみも大きく関係している。
アメリカには、民主、共和という二つの大きな政党がある。複数の候補者の中から、だれが一番ふさわしいのか、全50州で党員集会や予備選挙を開いて正式な候補者を決めていく。今年は2月1日の中西部のアイオワ州での党員集会から本格的な候補者選びが始まった。
多くの州で党員集会などが一気に開かれる2月または3月の火曜日は「スーパーチューズデー」と呼ばれる(今回は3月1日)。ここが最初の山場で、勝ち目がない候補者は選挙戦をあきらめることもある。
今回は、誰もが予想していなかったトランプ氏が、スーパーチューズデーで勝利し、「トランプ旋風」といわれるほどの勢いを見せ、5月ごろには指名獲得を確実にした。一方の民主党では、当初はクリントン氏の圧勝と思われた。ところが、若者から絶大な人気を得た上院議員のバーニー・サンダース氏(75)が予想を覆す戦いを見せ、激戦となったが、7月にクリントン氏が正式に指名された。
いよいよ一騎打ちとなった大統領選だが、2人の候補者は対照的だ。
トランプ氏は過激な発言を何度も繰り返し、賛成と反対の議論を巻き起こし、テレビなどメディアの注目を集めるのが得意だ。
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