49人もの命が奪われる、アメリカ(米)史上最悪の銃乱射事件が起きた。そこには、テロ事件を防ぐ難しさのほか、この国の抱えたさまざまな問題が映し出されている。11月のアメリカ大統領選挙でも大事な論点となっている銃規制問題。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された解説を紹介しよう。
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アメリカ・フロリダ州のナイトクラブで6月12日、29歳の男が銃を乱射し100人以上が死傷する事件があった。警察との銃撃戦の末に死亡した容疑者は、世界各地でテロに関わる「イスラム国」(IS)に共感していた。
男が持っていたのは、殺傷する力がとても強い銃だ。たった一人で、49人もの命を奪った。容疑者は3年前、「自分はテロ組織と関係がある」と職場で話していたため、一時期は捜査の対象になっていた。しかし、事件で使った危険な銃は合法的に購入でき、警察も、買ったことを把握できていなかった。
アメリカでは過去にたくさんの銃乱射事件が起きている。2012年には、小学校で男がライフル銃を乱射し、子どもたちなど26人が殺害された。アメリカでは、銃で亡くなる人が年間約3万3千人もいる。一日に100人近くが射殺されている計算だ。
こうした事件が起こる度に、「銃を簡単に買えないようにしよう」という声があがるが、なかなか実現しない。民主党のオバマ大統領は銃規制にとても積極的で、12年の事件後には銃規制強化案が議会に提出されたが、否決された。
アメリカでは、銃を持つ権利が憲法で保障されていることが大きな理由だ。「自分の身は自分で守る」という考え方が昔からとても強い。さらに、「銃を持つべきだ」との考えを広める「全米ライフル協会」(NRA)という巨大で強力な団体もある。会員が500万人以上いて、銃を作る会社もお金をたくさん援助しているという。共和党議員の大半は協会から献金を受けているから、政治への影響力がとても強い。いまやアメリカ国民が持っている銃は3億丁ともいわれる。ほぼ全国民が銃を一つ持っている計算だ。
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