蓑手 一緒に、という部分がポイントですよね。子どもと同じ土俵に立ち、ときには質問や相談をすることも大事。保護者もICT教育を一緒に体験しながら、わが子に必要なこと、そうでないことを取捨選択していくべきです。

百瀬 ほとんどの保護者はICT教育を受けずに育ちました。自分の経験だけで物事を捉えると、現代の子どもとは大きなすれ違いが生じます。子どもたちの現在と将来を見つめるためにも、保護者は常に自身をアップデートする姿勢が大切ですね。

蓑手 同感です。私の経験上、わが子が学んでいること、新たに取り組んでいることに保護者が積極的に関心を寄せる家庭では、子どもがよりのびのびと生活を送る印象があります。一緒に考え、学ぶ意識が、子どもたちにいい影響を与えることにつながります。

百瀬 文部科学省は学校教育を通じて、思考力、判断力、表現力を育成することを強調しています。蓑手さんは、ICTはこれらの育成にどう関与できると感じていますか?

蓑手 この三つは教わって身につける力というよりも、たとえば「自ら考えてものを作る→先生や友人からフィードバックを受ける→それをもとに次は何を作ろうかと考える」というサイクルが1周したときに初めて育まれるものだと考えています。ICTを活用することで、これまでよりもこのサイクルを格段に早く回すことが可能になりました。

百瀬 このサイクルの素早い回転は、子どもたちのやる気にも直結するんですよね。

蓑手 おっしゃるとおりです。すぐにフィードバックがあることで、自分が作ったものや考えたものをよりよくしよう、修正しようという意欲を高めます。同時に、その瞬間にこそ思考力、判断力、表現力は伸びるのだと思います。

百瀬 ICT教育の浸透によって、小学校での学びは今後も変化していきそうですね。

蓑手 従来のアナログ時代のままでは、子どもたちは大人が知っていることを教わるという受け身の学習が続きます。デジタル時代を生きていく子どもたちに対し、学校も教員も学び続け、最先端の環境を提供しなければなりません。ICTを通じ、多様な経験や可能性に触れさせることが大切だと思っています。

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