■ICTの活用によるメリットは少なくない
百瀬 宝仙学園小学校の教員にも、オンラインで授業を配信したいという大きなパワーがありましたね。そのなかで特に考えさせられたのは、「何のために学校はあるのか?」ということでした。授業を行うことも重要ですが、同時に教員と児童、そして児童同士のつながりも、欠いてはならないものだとあらためて気づかされました。ですから、授業以外にも朝礼や休み時間などを設け、時間帯によってはオンラインを通して自習室も設置しました。ICTとコロナ禍を通じて、学校の存在意義を見直すことができたような気がします。
蓑手 私は授業を進めるなかで、ICTの活用によりすべての児童の声を吸い上げられるようになったのは非常に大きなことだと感じました。従来の教育現場では、言葉でのやり取りが多く、声の大きな子、おしゃべりな子が目立ちました。発表しなければ意見がないのと同じように見え、特に場面緘黙(かんもく)症という特定の状況では話ができない児童にとっては難しい環境でした。それが今では、アプリ上に書くことでその児童の意見が拾い上げられ、同時にクラス全員が見られる状態にある。声に出さなくても伝えることができるようになったんです。
百瀬 ICTを通じて、一人ひとりが発信する機会、独自の発信の仕方が生まれますよね。我々が導入しているロイロノート・スクールのようなアプリを活用することで、共同作業をしながら各自がコメントすることができます。発表の仕方も、トークが得意な子もいれば、プレゼンのような手法や、紙芝居のようなクリエーティブな形で展開する子もいます。ICTにより、各自の創造性や主体性、個性を伸ばすことができています。
■小学校におけるICT教育の未来
百瀬 ICT教育が広がるなか、保護者の理解や協力は不可欠です。児童の使用に関しては、端末の不適切な使用、有害サイトへのアクセスも懸念されます。保護者も情報リテラシーを高め、使い方や使用時間などを子どもと一緒に考えていく必要があります。
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