安浪京子さん
安浪京子さん

矢萩:一般的には「物事の真相を見極めようとする活動」などと言われますが、わかりやすく言うと、興味のあるテーマの「なぜ?」を調べて考えたり、知識のあるなしに左右されない「問い」についてみんなで一緒に考えたりして、対話することで深めていく活動ですね。ですから違う学年の子が一緒に授業を受けることもできます。

安浪:知識があること前提で、正解を素早く出すことが求められる中学受験の勉強とはちょっと違いますね。

矢萩:でも答えを出すプロセスに探究的要素を入れていくことは可能かと。

安浪:それはあります。算数の勉強でも公式を教えて「これに当てはめて答えを出してね」と言うのと「どうしてこういう公式ができたのかな?」と考えさせてから答えを出すのとでは学びの質が全然違います。

矢萩:そうそう。結局は教える側の問題なのですが。

安浪:最近は多くの方に「探究」という言葉が浸透してきた感があります。保護者の相談でも「もっと探究的に学ばせたい」などの言葉が出るようになりました。

矢萩:この数年で劇的に変わってきましたね。今回のご相談者さんのように「中学受験をしたいけれど詰め込み勉強はさせたくない」と考える親御さんが増えてきた。

安浪:ただね、この回答はすごく難しいんです。「詰め込み勉強はさせたくない」と言っても「○○校ぐらいのレベルの学校に行きたい」などおっしゃっていることも多くて、偏差値もちゃんとこだわっていたりする(笑)。

矢萩:僕ら相談される側からすると、相談者が求める目的によって打てる手は全然違ってくるんですよね。

安浪:そうなんです。そもそも塾選びも変わってきますしね。

矢萩:安浪さんのところに相談に来る方はやはり大手塾に通っているご家庭が多いんでしょ?

安浪:はい。「大手塾に通っているけど授業についていけない」「志望校の偏差値に届かない」というパターンがほとんどですね。矢萩さんのところは?

矢萩:そもそもウチは「探究的な学びをする塾」なので、中学受験で必要なテーマは扱うけれど「受験も合格も目的としていません」と最初に打ち出しているんです。まずはやりながらその子の性格や適性であるとか、何が楽しくて、どんな学び方と相性がいいのか、そもそも私立や公立一貫校に行きたいのかどうかを対話しながら考えていって、その過程で受験が必要ならしましょう、というスタンスです。そこはちゃんと保護者の方と合意形成できています。

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