そのためだろう。彼は得点が出るものに対して異様なおびえを見せていたのだ。
もうお分かりだろうが、低学年からの塾通いを検討される際は、わが子が前述したメリットを享受できるか、はたまたデメリットに挙げたような事態に陥ってしまうのか……ここは慎重に考えて判断すべきだろう。
■都心では低学年で満席になる塾もある
「そんなことを言われても、地域事情を考えてくれないと……」
こんなふうに憤慨、困惑する保護者もいるだろう。
中学受験熱が高まっている昨今、とりわけ都心部にあるいくつかの塾では小学1年生や2年生から入らないと「席が埋まってしまう」という問題がある。だからこそ、わが子をその塾で中学受験勉強させるためには、「席を確保」するためにも、早期から通わなければならない……。保護者がそんなふうに焦ってしまうのは当然のこと。
「あのとき、通わなかったから……」
何年も経ってからそんな後悔の念にさいなまれるくらいなら、早期から塾に通わせるのも手だろう。
ただし、前述したとおり、低学年からの塾通いはメリットもデメリットもある。わが子がそのメリットを最大限に享受できるよう、保護者には次の二つのスタンスを持って臨むことをおすすめしたい。
一つ目は、低学年の塾はあくまでも「習い事のうちのひとつ」という位置づけであり、わが子がのんびり学べる環境を構築してほしいということ。このことは、子どもが学ぶことを好きになってくれるための大切な条件だとわたしは考えている。
そして、二つ目は、低学年(1~3年生)と高学年(4~6年生)は、通う塾がそれぞれ違ってもよいという、ある種「肩の力を抜いた」考えを持ってほしいということ。どんな塾であれ万人に合うところなど存在しない。低学年で通う塾が「わが子が学力を伸ばすのに良い環境」と思えれば、そのまま高学年でも継続すればよいし、反対に、「わが子にしっくりこない」というのであれば、高学年からはさっさと転塾に踏み切るという柔軟性が必要である。
話を冒頭に戻すと、「中学受験のための塾通いは何年生からがベストか」という問いに対する最適解は存在しない。本記事が保護者のお悩みの参考になれば幸いだ。
(文/矢野耕平)