「詰め込み」「偏差値」というイメージが強い中学受験。「受験のための勉強は子どもの将来に役に立つの?」「難易度より、子どもを伸ばしてくれる学校を選びたい」といった悩みを抱えている親御さんも増えています。思い切って「偏差値」というものさしから一度離れて、中学受験を考えてみては――。こう提案するのは、探究学習の第一人者である矢萩邦彦さんと、「きょうこ先生」としておなじみのプロ家庭教師・安浪京子さんです。連載7回目の今回は、私立か、公立かを悩む親御さんからの相談です。

MENU ■公立は「平等」、私立は「自由」 ■私立も「桃源郷」ではない ■公立に行ってもやってきたことは絶対無駄にならない ■学校の中身を知っている塾の先生はわずか

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安浪:これは都内にお住まいならではの悩みですね。選択肢が多いからこそいろいろ悩んでしまうという。

矢萩:私立は設備の質や、理念が統一されているところがいいところですかね。理念が合う学校を選択できます。公立の場合は良くも悪くも構造的に統一されているところを、どう判断するかですね。

安浪:公立は基本的に同じ枠組みというか、同じカリキュラムや教材を使いますしね。私学の場合は大学受験を見据えて進度が速かったり、副教材が充実したりしている場合も多いですね。

■公立は「平等」、私立は「自由」

矢萩:それにも関連しますが、公立の学校って平等第一なんですよ。だから、例えば今回のコロナ禍の中でのオンライン授業もそうなんですけど、全員が平等に提供できないのだったら「やらない」っていう選択を取るんです。インターネット環境が整っていないご家庭があります。じゃあそういうご家庭に差がついちゃうんだったらいっそやらないほうがいいですね、宿題はプリントを各家庭に届けるのでそれをやってください、それだったら平等ですよね、って。

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安浪京子 矢萩邦彦
安浪京子 矢萩邦彦

安浪京子(やすなみ・きょうこ)/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は『中学受験にチャレンジするきみへ 勉強とメンタルW必勝法』(大和書房)。

矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

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