3歳の娘に、義理の母から季節ごとに手作り服が送られてくることを嘆く母親。義理の母と娘との絆を養ってあげたいものの、本心では「ありがた迷惑」と感じています。どのように断ればいいでしょうか。「論語パパ」こと中国文献学者の山口謠司先生が、「論語」から格言を選んで現代の親の悩みに答える本連載。今回の母親へのアドバイスはいかに。

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【相談者:3歳の娘を持つ40代の母親】

 3歳の娘を持つ40代の母親です。私の悩みは、季節ごとに義理の母から手作りの洋服が届くことです。全く趣味が合わず家の中だけでも着せたくない代物ばかり。正直、ありがた迷惑です。普段はクローゼットの奥に眠らせたままですが(義理の母の魂がこもっているようで捨てられないのです!)、年末年始に夫の実家に帰省する際には、やはり娘に着せていくべきでしょうか。最近おしゃべりが止まらない3歳の娘は、「今日初めて着たよ」と義理の母の前で言いかねません。また、今後は手作り服のプレゼントを断りたいのですが、どのように伝えればいいでしょうか。

【論語パパが選んだ言葉は?】

・「民の義を務め、鬼神(きしん)を敬して之(こ)れを遠ざく。知と謂(い)う可(べ)し」(雍也第六)

・「君子は義以(も)って質と為(な)し、礼以って之(こ)れを行い、孫(そん)以って之れを出(い)だし、信以って之れを成す。君子なる哉(かな)」(衛霊公第十五)

【現代語訳】

・「人間の道理を大切にし、人間を超えた存在(=鬼神)に対しては、尊敬を捧げつつも、ある一定の距離を保つ。それこそが知恵というものだ」

・「君子は、あらゆる事柄に対して正義を本質とする人。礼儀にかなうように行動し、謙遜した言葉で相手に接し、偽ったり欺いたりすることなく、信義の心をもって完成する。かくて君子である」

【解説】

 お答えします。お気持ち、お察しいたします。手作りのものが、いきなり送られてくることほど迷惑なことはありません。全く趣味が合わない洋服、口に合わない味付けの料理など、いただけばお礼の手紙や電話をしないわけにもいきませんし、いただいたものをどうしていいのかも悩みます。二重三重に暗い気持ちになってしまいます。まったく「ありがた迷惑」というほかありません。

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山口謠司
山口謠司

山口謠司(やまぐち・ようじ)/中国文献学者。平成国際大学新学部設置準備室学術顧問。大東文化大学名誉教授。1963年、長崎県生まれ。同大学大学院、英ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。NHK番組「チコちゃんに叱られる!」やラジオ番組での簡潔かつユーモラスな解説が人気を集める。2017年、著書『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞受賞。著書や監修に『眠れなくなるほど面白い 図解論語』(日本文芸社)など多数。2021年12月に監修を務めた『チコちゃんと学ぶ チコっと論語』(河出書房新社)が発売。ラジオパーソナリティ、イラストレーター、書家としても活動。フランス人の妻と、大学生の息子の3人家族。

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