初対面同士の5~6歳児にはハードルが高いように感じられるが、大原さんは「試験官が見ているのは、未知の課題に出会った時も、間違いを恐れずにチャレンジする姿勢です。作戦を練る思考力や、仲間に指示を出すマネジメント力も問われます」と話す。
こうしたゲーム性の高いグループワークや、グループディスカッションの手法は、外資系やスタートアップ企業の採用試験や管理職研修でも使われるという。集団における協働性や難題に立ち向かう積極性を、面接官と1対1の場で測るのは難しい。「プロジェクトの出来栄え」という成果に対して、客観的な評価をしやすいというメリットもある。
慶應義塾大学の系列小学校では、福沢諭吉の「まず獣身を成してのちに人心を養う」を実践するために、ペーパーテストよりも、模倣体操や行動観察が重視されるのが特徴だ。一方で、洗足学園小など中学受験に強い小学校では、ペーパーの比重が高い。
「試験内容を分析すると、学校側がどんな子どもを求めているかがわかります。学校(=企業)の理念がそのまま試験に反映されていると言っても過言ではありません」(矢野さん)
「志願者が多い人気校ほど、高いフィルターをかけて、志願者の母数を絞らざるを得ないので、ペーパーテストで絞る学校もあります。この点も企業の採用試験と同じです」(大原さん)
■採用面接とお受験面接
小学校受験では親同伴が基本ではあるものの、押さえるべきポイントが就活とまったく同じだというのが、面接だ。
「受験生は『聞かれたことにきちんと答えられるか』ばかりに意識がいきがちですが、それならアンケートを行えば済みます。本当に求められているのは、『面接官は今、この状況で、何を求めて質問しているか』を見極める判断力です」(矢野さん)
採用面接で「家での過ごし方」を聞かれて、正直に「ネットフリックスです」と答える学生は少ないだろう。5~6歳児も同じだ。面接官である小学校の先生に「ぜひうちにきてほしい」と思ってもらうという「面接の目的」を理解した上で、話さなければならないのだ。
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