たとえば『家ではどんなお父さんですか?』と聞かれた場合。「『最近疲れて寝てばかり』と話す子どもは、かわいらしい。でも、『せっかくだから大好きなお父さんの素敵なところを知ってもらおう』と、一歩深く考えて自分の言葉でお話でききるように私たちは指導しています」(矢野さん)

 後者の能力は、大人になったときのコミュニケーション力につながっていくという。

 伝統校だから、有名企業だから、を志望理由に挙げても、面接突破は難しい。面接官が知りたいのは、ペーパーテストでは測れない受験者の「わが校(社)に入ったあと発揮されるであろう潜在能力」だ。「カラーが合う」「育ててみたい」「活躍する姿がイメージできる」と面接官に思わせたら合格に近づく、というわけだ。

■入学願書とエントリーシート

 その面接の材料となるのが、入学願書だ。何百、何千枚もの願書を読んでいる小学校の先生は、教育方針についてよく調べたうえで熟慮を重ねて推敲した願書なのか、そうでないかは一読してわかる。書き方の極意について、大原さんはこう話す。

「これまでわが子は何ができなくて、その課題に対してどのように家族で向き合い、克服してきたか。その成長プロセスを、『学校側がその子どもを入学させるメリット』まで考えて、言語化できるかに尽きます」

 就活のエントリーシートもしかり。自分だけの物語を語るための「自己分析」と、入社後にどう貢献してくれるかを採用担当者にイメージしてもらうためにも「企業研究」は欠かせない。

■「縁故者しか入れない」は本当か?

 昨秋、就職情報会社のメール誤送信による「学歴フィルター」騒動が起きたばかりだが、お受験でも噂に事欠かないのが、家庭の年収などの「見えないフィルター」や、縁故枠の存在だ。

 矢野さんは、この問題を「学校にも企業にも、本音と建て前があり、まさに社会の縮図」としたうえで、「人が人を評価する以上、合否の決め手は、試験官しか知り得ません。これが、昔から小学校受験がブラックボックスと批判されるゆえんで、不安から邪推めいた憶測が広がりやすいのです」と話す。

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