職員室の出入りや施錠の管理についても、以前より慎重な対応が求められるようになりました。
児童と1対1になる場面では、必ず窓を開けて外から見えるようにするなど、外部から状況が把握できるよう工夫する日々です。
事件報道後、児童や保護者から「警戒されているのではないか」と考えてしまうこともあると男性は吐露します。
「やはり子どもたちもニュースを見ているので、自分の何気ない行動も『変に受け取られてしまうのでは』と感じてしまうことがあります。
正直に言うと、『教育の現場なのに、こんなに気を遣わなければいけないのか』と思う瞬間もあって……。純粋に子どもたちの成長を願う気持ちと、疑われたくない防衛心。その狭間で苦しむことがあります。だからこそ、より慎重で丁寧な対応を心掛けるようになりました」
と男性は話します。
「複数担任制や監視カメラで抑止力を」と専門家
教員不足が深刻化するなか、一連の性暴力事件により教職の信用が失墜し、さらなる担い手不足も懸念されています。
信頼を回復するためには、どのような対策が必要なのでしょうか。学校事情に詳しい教育評論家の親野智可等さんは、教育予算を増やして、複数担任制の実現と監視カメラの設置が必要だと訴えます。
教員の数を増やし、複数担任制にすることで「抑止力が働く」と親野さんは言います。
「教室という密室で、『1人の大人と子どもたち』になるという状況を避ける必要があります。欧米では少人数クラスの複数担任制がスタンダード。複数担任制にしてもう1人大人の目があれば、教員によるモラハラ、パワハラ、セクハラなどの抑止力は格段に上がります」
次に親野さんが必要性を訴えるのは監視カメラの設置です。
「これには賛否両論ありますが、抑止力にはなります。カメラと同じで『何かあったときに証拠になる』と考えて設置するのがよいと思います。ただ死角もあるため、万能ではありません。
教員不足と教員の多忙化が相まって、教員のストレスが増えていることも大きな要因の一つ。まずは諸外国にならい、教育財政の予算を増やすことから始めなければ、一連の問題の改善は難しいでしょう」
(取材・文/大楽眞衣子)