世間を震撼させた小学校教員らグループによる児童盗撮・共有事件。このほかにも、教員による性暴力事件が全国で相次いで発覚しています。そのようななか、教育に情熱を注ぐ教員たちからは、「大多数は一生懸命がんばっているのにやりきれない」という声が上がります。子どもたちの成長を願う気持ちと、疑われたくないという防衛心。その間で揺れる男性教員たちの葛藤に迫りました。

MENU 学年便りの写真1枚にも気を遣う日常 自分を守るために児童と距離をあけ 「手を出せない」体育指導の現実 不安と葛藤の中で…悩みながらの指導 1対1の児童の指導は可視化 「複数担任制や監視カメラで抑止力を」と専門家

学年便りの写真1枚にも気を遣う日常

「終わったな……」

 関東地方の小学校に勤務する50代男性は、教員グループによる盗撮事件の報道を知り、絶望にも似た感覚に襲われたといいます。男性は、児童との適切な距離感について、常に注意を払って教員生活を送ってきました。それだけに、「意識を高く持ってやってきた僕たちと、今回の事件とではあまりにギャップがあり、ショックが大きい」と憤ります。

 学校教育の中で性教育の重要性は急速に高まってきたのがここ10数年ほどの間。男性は、その頃から児童とは適切な距離をとるよう研修を受けてきました。数年前からは児童の肖像権への意識も高まり、写真の取り扱いはさらに慎重になったといいます。

「児童の撮影には校務用カメラしか使いませんし、学年便りにもむやみに写真を載せなくなりました。卒業アルバムは保護者に許可をとってから作成に入っています。だから、僕らからすると盗撮だなんてとんでもない世界なんです」

 と、やりきれなさに男性は肩を落とします。

自分を守るために児童と距離をあけ

 世間の目が厳しくなる一方で、教員たちが苦慮するのは距離感の近い子どもたちへの対応です。教員に抱きついたり、手をつかんできたり、ひざに乗ってきたりする子どもも。前出の男性教員は「さりげなく距離を置くよう工夫している」と言います。

「くっついてくる子がいても、距離をとるようにしています。例えばひざに乗ってこないよう、ひざを机の下に入れるなど、座り方も工夫しています。手をつかんできたら、『そうだね』などと受け答えしながら、さりげなく手を外す。校内研修でそういったことも教わってきました。これは自分を守るため。子どもたちに距離感を教えていくことも大事だと思っています」(男性教員)

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大楽眞衣子
大楽眞衣子

ライター。全国紙記者を経てフリーランスに。地方で男子3人を育てながら培った保護者目線で、子育て、教育、女性の生き方をテーマに『AERA』など複数の媒体で執筆。共著に『知っておきたい超スマート社会を生き抜くための教育トレンド 親と子のギャップをうめる』(笠間書院、宮本さおり編著)がある。静岡県在住。

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