子どもの性被害のニュースが、あとを絶ちません。性被害には、低年齢でも性別を問わずあうことがわかっています。子どもの性被害の実態について、長年、性暴力対策に取り組んできた慶應義塾大学SFC研究所上席所員の小笠原和美さんに伺いました。「AERA with Kids 2024年夏号」(朝日新聞出版)から、ご紹介します。
【図】データで見る子どもの性被害の実態子どもを狙った性犯罪の実態とは
警察庁によると、昨年児童が被害者となった性犯罪の検挙数は4418件。
「しかし、実際の被害数はもっと多いと言われています。内閣府男女共同参画局が発表した『男女間における暴力に関する調査』でも、被害者のうち、警察を始め誰にも相談できなかったという回答が55.7%に上りました」というのは、性暴力対策に取り組み、子どもの心身を守る活動をしている小笠原和美さん。
同調査では一生涯で不同意性交等をされた被害経験のある人は女性8.1%、男性0.7%。性被害に遭った時期が小学生以下の割合は22.9%、性犯罪被害にあった人と加害者との関係は、知らない人からの被害は約1割。残りは交際相手、学校、習い事の指導者、親族など身近な人という結果です。
「性犯罪は女性が被害に遭うイメージが強いかもしれませんが、男児ばかりを狙う加害者もいます。また身近な人からの被害もあることから、大人の十分な配慮が必要ということがわかります」
SNSで言葉巧みに子どもを狙う加害者たち
小学生のSNSでの犯罪被害数は約10年前に比べて3倍に増えています。
「子どもの何げない投稿に、加害者が接近してくるケースが多いです。同世代や同性を装う手口もあります。加害者はまず、子どもの話題に同調し、悩みを聞いてあげるなどして信頼関係を築きます。そして次第に水着や下着、裸の写真を送ることを求めてきます。拒否すると、今まで話したことをばらすなどと脅迫し、要求をエスカレートさせていくのです」
揚げ句、直接会うことを強要され、不同意性交に至ったケースも。
「SNS上のやり取りは親から見えにくいため、被害を把握しにくいという難しさがあります。ただ、被害児童のアクセス手段は97%がスマートフォンで、確認できたケースのうち約90%がフィルタリングを利用していませんでした」
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