おすすめポイント
いちばんの見どころは何といっても自然の描写です。小さなトガリネズミの視点で描かれる世界は、何もかもが大きく、草むらだって森のようです。カラーの表紙や、本の前と後ろに差し込まれたカラー口絵、全見開きに入った絵を見ていると、自分もトガリィと同じくらい小さくなった気分で、物語の世界に入っていけることでしょう。
お話は、トガリィじいさんの語りによって進みます。章の間には、トガリィじいさんの話を受けて、孫のキッキ、セッセ、クックがあれやこれやと感想を言い合います。風や雲や水はトガリ山から生まれたというけれど、「生まれた」というなら風や雲や水は「生きている」のか。トガリ山に登ると一人前になれるというけれど、一人前になるってどういうこと? 3匹の感想は一見すると無邪気で子どもらしいのですが、思いがけず深いテーマを扱っていることも多く、さながら哲学対話のようです。

大自然を舞台としたファンタジーではありますが、トガリィが格闘の末、トノサマバッタを捕まえて食べるといったシーンもあり、自然の摂理や命をいただくことの意味についても考えさせてくれます。
全8巻と、小学校低学年にはかなり読み応えのあるシリーズですが、夏休みなど、時間がたっぷりあるときにぜひ挑戦してみてほしい名作です。
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