(2)寒くない・冷たくない・虫が浮いていない

 自分が泳ぐのを待っている間は、プールサイドで座って待ちます。

 屋内にあるプールだとそれほど寒くありませんが、学校の屋外プールだと、水に濡れた体に風が当たりブルブル震える子どももいます。だから、教師としてできるだけプールサイドに上げる回数を減らしたり、プールサイドで待つ時間を短くしたりするように指導の工夫をします。

 さらに、6月のプール開放の日や、曇りの日だと、それほど気温も水温も高くないことがあります。水をとても冷たく感じる日もあります。屋内プールだと天候によって水温や気温が変化することはありませんが、学校にある屋外プールは天候の影響をとても受けます。

 冷たいプールの水に、唇を真っ青にしてまで入っている子どもを見かけたら「大丈夫? 無理したらダメだよ」と声をかけて、プールから上げてタオルを巻くようにしています。それでも、「がんばって入ります!」と言う子どもも多いです。泳ぐことを頑張るよりも、まず寒さや冷たさに我慢できるかになってしまっていないかと思うことがあります。

 また、学校の屋外プールは虫がよく浮いています……。私が勤務する自治体の小学校は、講堂の上の屋上(校舎の4階あたり)にプールがあります。それでも、アメンボが泳いでいることもありますし、羽アリが飛んできて、水面に浮かんでいることもあります。1時間の授業で、30匹以上の羽アリをすくったことも……。そして空を見上げたら、鳩やカラスが飛んでいます。もしかしたら、鳥の糞が落とされていないかなと、心配にもなります。だから水質管理にはものすごく神経を使うのです。

 水泳指導が民間委託になれば、プールの準備や片づけにかかる教員の負担を減らすことができ、働き方改革につながります。民間委託にかかる費用を差し引いても、プールの施設管理や維持にかかっていた費用に比べて、大きな縮減が可能です。そしてなにより子どもたちが安心・安全に充実した水泳の授業を受けられることを第一に考えると、民間委託が進むことはとてもいいことだと思います。

(文/松下隼司)

プールの授業でラッシュガードが当たり前? 現役教師が見た水泳授業3つの変化
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松下隼司
松下隼司

1978年生まれ。奈良教育大学卒業。大阪の公立小学校に勤める現役教師。2児の父親。文部科学大臣優秀教職員表彰を受賞。令和6年版教科書編集委員を務める。著書に絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)、『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)、教育書『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)、『教師のしくじり大全 これまでの失敗とその改善策』(フォーラムA企画)などがある。教師向けの情報サイト「みんなの教育技術」で連載を持つほか、Voicy「しくじり先生の『今日の失敗』」でパーソナリティーを務める。

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