高濱:例えば、医師は治療や診断だけでなく、親身になって話を聞いたり安心させたりすることも大切ですよね。コミュニケーション力というときれいですが、AIのような合理的なものではなく、人間特有の“不合理なこと”を「どう楽しむか」が重要になると思います。
だから、夫婦関係なんてまさに「サバイブ力」が問われるじゃないですか(笑)。子どもが生まれた途端に「母親」になる妻に夫はどう対応していくのか。「うまくいかない状況を楽しむ力」、これは夫婦だけでなく親子や同僚、さまざまな関係性で役立つ、21世紀を強く生きるために必要な力だと思います。
yuu:困難な状況を楽しむには、どんなマインドが必要ですか?
高濱:「人が好き」「人に興味がある」みたいな気持ちが大切なんじゃないでしょうか。
私はクレーマーの話を聞くのが好きなんです。「この人も赤ちゃんのころはきっとかわいかったはずなのに、なぜこういう人になったんだろう?」という視点で話を聞いていくと、必ずその原因があります。「こうなったのはなぜだろう」と相手の立場になって見つめてみると、困難を乗り越えられるヒントが見つかるかもしれません。テストの点数や偏差値にとらわれていると、AI時代には大きな壁にぶつかってしまうかもしれませんね。
これからの時代を強く生きるために大事な3つの力
yuu:学歴社会ではないということは明らかですよね。「サバイブ」していくためにどんな力が大切ですか?
高濱:これからの時代をサバイブしていくには、計算や漢字などの基礎力の土台があった上で、「思考力」「べき力」「博士力」の3つの力が大切だろうと考えています。一つ目の「思考力」は、物事を主体的に考え抜く力。二つ目の「べき力」はやるべきことをやる力です。社会の大半の仕事はフォロワーですから、業務を淡々とこなす力も意外と重要なんです。
もう一つ重要なのが「博士力」。自分の関心に忠実にひたすら突き進む力です。さかなクンみたいな。何かに夢中になってとことん突き詰める力も、AI時代に生き残る一つのエンジンになるんじゃないでしょうか。
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