小学校でデジタル教科書はどう使われているのでしょうか。国による「学習者用デジタル教科書」の本格導入がスタートして1年。子どもたちの授業はどのように変化したのか、公立小学校教員に本音を聞きました。※後編<広まるデジタル教科書、紙の教科書とどう違う? 「紙かデジタルか二項対立の議論をしている段階ではない」と専門家>に続く
【マンガ】子どもはスマホで何の動画を見ている?親が意外だった“勉強”への活用法(全10枚)導入から1年、大転換に戸惑う小学校教員も
GIGAスクール構想による1人1台端末環境が整い、文部科学省はデジタル教科書の準備を進めてきました。電子黒板やプロジェクターを使った指導者用デジタル教科書は2010年代から導入が進み、既に広く利用されています。一方、子どもたちが個々に使う学習者用デジタル教科書はスタートしたばかり。モデル校などでの実証事業を経て、2024年度から全国で本格導入が始まりました。まずは小学5年生から中学3年生を対象とし、現在英語と算数・数学(一部)が無償提供されています。まさに今は子どもたちの学びが大きく変わる大航海時代。紙の教科書との併用で学校現場には戸惑いもあるようです。
「教員用のデジタル教科書はとても役立っていますが、子どもたちは紙ベースの教科書しか使っていません。画面ばかり見る時間が増えるのはいかがなものかと……」
と話すのは都内で小学5年を担任する男性教員(50)です。
「学校では聞く・伝えるという学び合いのコミュニケーションを大切にしたいです。討論のときにタブレットを見て話し手を見ないというのは一番よくない。学校では感じることや失敗することも大事です。デジタル教科書はすぐに正解を知ることができますが、理科の実験もメダカの飼育も、近所の人への取材も討論も、実際にやってこそ意味があるんです」
と児童のデジタル教科書には慎重な態度を示します。
男性はあえて紙のノートに考えを書き込むことも重視していると言います。
「デジタル教科書にもたくさん書き込めますが、考えに考え抜いて紙のノートに書く方が子どもの思考は豊かになり、教育的効果があるような気がしています。小学生にはその方が思考のスピードに合っているのでは。年齢を重ねるごとにデジタルも使えるようになって、将来的に紙かデジタルか選べるようになればいいと思います」と話します。
次のページへ教員格差が浮き彫りに