自治体ガチャ?タブレット端末が古くて使えないケースも

 ハード面の問題でデジタル教科書が使えないケースもあります。自治体によって児童が使用する端末の機種やスペック、通信環境はさまざまです。“自治体ガチャ”とも言える状況で、ハード面の不具合により教育の機会に不均衡が生じているケースも。

 小学6年生を担任する静岡県の30代女性教員は、デジタル教科書の使用に意欲的なものの、「実は使っていない先生の方が多い」と打ち明けます。原因はタブレット自体の問題のようです。

「タブレット端末が古いので、立ち上がるまでにものすごく時間がかかるんです。うまくネットにつながらないトラブルもあります。そんな状況なので、45分間という短い授業内で使うのはなかなか厳しいものがあります」

 この自治体では「充電は家」が原則で、児童は重くて分厚いタブレットを毎日持ち帰らなくてはなりません。一方、横浜市では小学校と特別支援学校でiPadが配布されています。同市では「充電は学校」が原則で、充電器は持ち帰りません。

発達の特性に合わせて使えるが教える側の難しさにも直面

 横浜市の公立小で特別支援学級で複数の学年を受け持つ50代女性教員は、児童の特性に合わせて利用できる個別のデジタル教科書について、

「読み上げ機能があるので、読み書きが苦手なディスレクシアの子もイヤホンで音声を聴きながら学習できるようになりました」と評価します。

 一方、多学年を同時に教えるという特殊な環境下では、教え方の難しさにも直面しています。

「複数の学年の子たちを同じ教室で同時に教えるので、今どのページを開いているかパッと見て分かるのはやはり紙の教科書です。画面を1人ひとりのぞいて今どこやってる?と確認するのはあまり現実的ではありません」

 さらに戸惑うのは発達段階に合わせた学びについてです。低学年用のデジタル教科書もありますが、「画面を通して図形を理解するにはまだ早いのでは」とも感じるそうです。

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