まだ中学生のE君が、シェフになるかどうかはわかりません。しかし、E君が「自分の充足感は料理にある」と見つけられたのは、E君にそれをするだけの時間と心の余裕があったからです。
作家には早生まれ族が多い?
自分の好きなことを、コツコツと続けられる。
それは早生まれ族が置かれた環境によるものかもしれません。書くことをずっと続けてきた、という小説家の綿矢りささんに、お話を伺ったところ、「小説家は早生まれが多いという話を聞いた」という興味深い情報が。
そこで、2025年現在の芥川賞、直木賞の選考委員の誕生日を調べてみました。
〈芥川賞選考委員 ※2025年2月現在、敬称略〉
小川洋子 3月
奥泉光 2月
川上弘美 4月1日
川上未映子 8月
島田雅彦 3月
平野啓一郎 6月
松浦寿輝 3月
山田詠美 2月
吉田修一 9月
9人中6人が早生まれ
〈直木賞選考委員 ※2025年2月現在、敬称略〉
浅田次郎 12月
角田光代 3月
京極夏彦 3月
桐野夏生 10月
林真理子 4月1日
三浦しをん 9月
宮部みゆき 12月
辻村深月 2月
8人中、4人が早生まれ
たった17人の選考委員中、10人が早生まれ。そのうち、4月1日生まれが2人もいるという驚きの確率です。
もちろん、単なる偶然かもしれません。ただ現在、日本の代表的文学賞を選ぶ選考委員が、早生まれ族が中心となっているということは、間違いのない事実なのです。
成績がいいと、競争に参加してしまう
SさんとE君は、それぞれ自分の好きなことを続けています。
それができたのは、他人と同じ競争に参加しなかったからです。4月や5月生まれで幼い頃からクラスの代表を任されてしまう人や、成績が良い人というのは、気がつくと標準化競争のトップを走ることになっているものです。なぜなら、そうするのが当たり前だからです。
もちろん、学歴が高いことは、悪いことではありません。なぜならそれによって、進路や就職の選択の自由度が高まるからです。医者になりたいのであれば、やはり医学部に入れるだけの成績が必要になります。弁護士になりたいのであれば、司法試験に合格しなければなりません。単純に、勉強ができれば周りが褒めてくれますから、自己肯定感にとってもプラスです。これまで受験について深く掘り下げてきたのは、これは正面から向き合うべき問題だと思うからです。
次のページへ競争に参加しないメリットもある