幼児期に「好き」をとことん深める大切さ
――すごい行動力ですね! ちなみに、モンテッソーリ教育を知って「目からウロコ」だったのはどんな点ですか?
モンテッソーリ教育の根底には「子どもたちは、自分の力で自分自身を育てる」という考えがあります。
ですから先生は「教える」のではなく、彼らが自発的に力を発揮できるような環境を整えたり、安全性を見守ったり、迷ったときに「こちらへどうぞ」と道案内をするような役割なんです。
園では、成長段階に応じた教具を200種類くらい用意します。子どもたちは教室を縦横無尽に歩きまわって、その中から好きな「お仕事」を見つけ出します。パズルをする子もいれば、タオルをたたむ子もいますし、きゅうりを切る子もいます。
――教具が200種類! その準備も先生たちの仕事なんですね。
そうなんです。朝8時に出勤して教具の準備をするのも先生の役目です。私は日本の「折り紙」も教具に加えました。アメリカでは紙の角を合わせて折る習慣がないので、手先を鍛えるのにちょうどいいんです。アメリカの子たちにも、折り紙は大人気です。
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――好きなことを自分で選んで遊ぶことが大切なんですね。
好きな「お仕事」に取り組む子どもの集中力って、本当にすごいんです。時間がたつのも忘れて集中しますし、幸せに満たされた顔をしています。その様子を毎日見守りながら、私も毎日感動しているんです。
たとえば靴ひもを通すだけでも、2~3歳の子には大変な挑戦です。「できない、できない、できない」を繰り返して、ようやく「できた!」になる。それは、ものすごい成長です。
子どもの成長って、なだらかな坂道じゃない。三段跳びのように、突然ボーンと飛ぶ。その瞬間まで待つことが、大人の仕事だと日々感じています。
「待つ」って難しい。だからこそ「待つ時間」を作る
――家庭では、なかなか待つことが難しいですよね。つい「貸して! ママがやる」と奪い取ってしまうこともあります。
わかります! 私もそうでした。日常生活をスムーズに送るためには「待てない場面」はたくさんありますよね。それは仕方がないと思います。
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