――2月の入試シーズンに入ってからは、どんな日々を送られていましたか。

 入試の直前は、寝込んでいた息子は思うように勉強ができませんでした。でも、体をゆっくり休めて1月30日ごろから回復してきた息子は、かえってすっきりした表情になっていました。2月1日の朝も、「行っておいで」と穏やかな気持ちで送り出しました。2月1日の午前と午後に2つの学校を受けました。塾で生徒たちの対応をしつつ、息子の合格発表のある時間だけ自宅に戻りました。

「あなたの受験なのだから、自分で発表を見なさい」と妻が息子に声を掛けタブレットを手渡しました。心配になったのでしょうか、娘もやってきました。第1志望校に合格していることがわかると、みなで肩を寄せ合い、「良かった、良かった」と何度も口にし、息子は泣きながら塾に電話をしていました。その後、別の学校も受けに行きましたが、そちらは不合格。2月1日の1日で気力も体力もすっかり使い果たしたのでしょう(笑)。

「親は“役者”になって平静を装いましょう」とは言えなくなった

――お子さんたちの中学受験を振り返り、いま思うこととは。

 中学受験をするか否かは自分で決めればいいことで、その子にとってどちらが良いのかは誰にもわかりません。ただ、本人が自らその道を選んだのであれば、自分の力でなんとか乗り切れるよう頑張ってほしいと思いますし、親はそれを見守り、支えることしかできないのかな、と思います。

 子どもの受験を経験するまでは、「入試直前は、親は“役者”になり平静を装いましょう」なんて生徒の保護者の方々にお伝えしていましたが、役者になんてなれないですね。「役者になるのはムリだ」と身をもって知ったので、もうそんなことは絶対に言いません(笑)。でも、精神的にハードな時期を経験して良かったな、とは思います。

 子どもたちは2人とも、いまのところ学校生活が楽しくて仕方がないようです。高校生の娘も体調不良以外で学校を休んだことはないので、中学受験を経験して良かったと思っているのではないかな、と感じています。

(構成/古谷ゆう子)

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矢野耕平
矢野耕平

矢野耕平(やの・こうへい)/中学受験専門塾スタジオキャンパス代表・国語専科 博耕房代表。1973年生まれ。著書に『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社+α新書)、『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』(ともに文春新書)、『LINEで子どもがバカになる「日本語」大崩壊』(講談社+α新書)、『旧名門校 VS 新名門校』(SB新書/SBクリエイティブ)、『早慶MARCHに入る中学高校』(朝日新書)など多数。

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