基本的に家で勉強に対し口を出すつもりはなく、「合格であっても、不合格であっても、それは君たちの勉強の成果なのだから」という考えでした。少しでも偏差値帯が上の学校に、という考えは我が家にはまったくなく、子どもが自ら頑張れる範囲で勉強したうえでの成績でいいのではないか、と。

 ただ、息子の入試直前には例外的にそう思えなくなっていて。自分でも想像していなかったことで、驚いたほどです。

入試直前に体調不良。「冷静ではいられなくなっていた」

――お子さんたちは日々、どんな姿勢で勉強に臨んでいましたか。また、矢野先生が平常心でいられなくなった息子さんのときの“例外”とは?

 娘は、「制服がかわいい」ということや知り合いが通っていたことが後押しとなり、憧れの学校がすぐに見つかったようです。息子はあるスポーツをしていたこともあり、小学3年のときには進学先として熱望する学校が見つかり、「自分はこの学校に行くんだ」という強い気持ちを持つようになっていました。2人とも「志望校に受かりたい」という真っ直ぐな気持ちで、勉強に向き合っていたと思います。

 想定外の出来ごとが重なったのは、息子の入試目前、1月のことです。まず、前受け校として受験した学校で、不合格が続きました。この時点で、僕もかなり焦っていたと思います。

 さらに息子は、1月の下旬に派手に風邪をひいてしまって。そのときは僕も動揺し、パニックにもなりました。後から塾のスタッフに聞いた話ですが、その頃は普段に比べソワソワしているように見えたようです。自分では、どんなときも冷静でいられると思っていましたが、思いもよらない事態に、とてもじゃないですが冷静ではいられなくなっていた。「何もかもうまくいかないのではないか」「どこにも受からないのではないか」という不安にさいなまれ、自分で自分をコントロールすることができなくなっていたんですね。ただ、何があろうと一番つらい思いをしている息子には当たらないようにしよう。自分のなかで、それだけは守っていたつもりです。

次のページへ親は見守り、支える
1 2 3