AERA with Kids+の連載「中学受験、その先に」。今回は特別編として、中学受験学習塾スタジオキャンパス代表で講師の矢野耕平さんに、ご自身の高校2年生の長女と中学1年生の長男が中学入試に挑んだときのことを聞きました。数々の生徒の入試を経験した矢野さんが、唯一、わが子の受験で動揺してしまったシーンとは――。 

MENU 中学受験をするかどうかは本人が決めた 家では子どもの勉強に口出しをしない 入試直前に体調不良。「冷静ではいられなくなっていた」 「親は“役者”になって平静を装いましょう」とは言えなくなった

中学受験をするかどうかは本人が決めた

――矢野先生は、父親として二人のお子さんの中学受験も経験されています。受験することを決めたのは、ご本人たちの意志だったのでしょうか。

 僕は塾の経営者であり、講師でもありますが、「中学受験はしてもしなくてもいいもの」というスタンスです。自分の子どもたちに対しても同じで、地元の公立中学に進み、高校受験をする、という選択肢はもちろんありました。ただ、小学3、4年の段階で塾に通ってみて、そのうえで中学受験を選択するか否かの意志を確認しようと決めていきました。二人とも、4年の終わりに「この先も勉強を続ける。中学受験をする」と自ら決断しました。

 ここで問題となったのが「どこの塾に通うか」ということ。他の塾に通ったとしたら、「父親は塾を経営しているにも関わらず、他塾に通わせている。何か理由があるのではないか」という目で見られてしまう。一方で、自分の塾に通わせたら、他の生徒やスタッフが気を使うのではないかという懸念もありました。マイナスとなりうる面をよく考えたうえで、最終的には自分の塾に通ってもらうことにしました。

 スタジオキャンパスは2校舎あり、かつ、塾では完全に「1人の生徒」として接していました。ですから、僕の子どもだとわかっている塾生は幼馴染をのぞいてはほとんどいませんでした。

家では子どもの勉強に口出しをしない

――ご自宅では、お子さんの勉強のフォローはされていましたか?

 家で子どもたちに勉強を教えることは一切ありませんでした。何だかウソっぽいですが、決してウソではない(笑)。仕事柄、帰りが遅いですし、朝は子どもたちの登校時間を過ぎてから起床していたので、平日は顔を合わせる時間がほとんどない状態でした。塾で「講師」と「生徒」として言葉を交わすくらいです。そういえば、長女の志望校の問題がクセのあるもので、入試直前に時間配分について少しアドバイスをしたくらいですね。

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矢野耕平
矢野耕平

矢野耕平(やの・こうへい)/中学受験専門塾スタジオキャンパス代表・国語専科 博耕房代表。1973年生まれ。著書に『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社+α新書)、『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』(ともに文春新書)、『LINEで子どもがバカになる「日本語」大崩壊』(講談社+α新書)、『旧名門校 VS 新名門校』(SB新書/SBクリエイティブ)、『早慶MARCHに入る中学高校』(朝日新書)など多数。

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