日常生活の中で感じる喜びや切なさ……。その瞬間をていねいに描き、聴く人に寄り添うような曲が人気の5人組バンド、wacci。人気を博したドラマ「放課後カルテ」(日本テレビ)の主題歌「どんな小さな」は、たとえ目立たなくてもがんばるすべての人にエールを送る歌詞が、幅広い年代の心に響きました。ボーカル&ギターの橋口洋平さんに、子ども時代のお話を聞きました。※後編<wacci橋口洋平に聞く高校時代「人間関係に悩み学校に行くのが嫌で嫌で。音楽と部活に出会い変わっていきました」>へ続く

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新しいクラスでも「またいつか、さよならがくる」とどこかで思っていました

――作詞作曲された「どんな小さな」に込めた思いを教えてください。

 ドラマ「放課後カルテ」の原作を読んでいく中で、自分も経験したり感じたりしたことがたくさんありました。そんな共通点を探しながら「こういうときのモヤモヤした気持ちって、どうすれば言葉で伝えられるかな」と、言語化したんです。

 ラブソングはほとんど実体験がないのですが、「どんな小さな」のような応援歌に関しては自分の体験が大いに入っている気がします。たとえば2番の歌詞で「仲よしが辛かったり」という部分や「誰も悪くないのに心がひとりでに人を嫌いになっていく」という部分も、僕の体験が投影されています。

――橋口さんは、どんな小学生時代を過ごされましたか?

 僕、小学校を3回転校しているんです。父の仕事は転勤が多く、小学1年生の前半まで五日市町(現在のあきるの市の一部)、後半から3年生まで青梅市、3・4年生は高知県、5・6年生はまた青梅で過ごしました。

――クラスになじんでも、また転校……だったのですね。

 そうなんです。比較的明るく快活な子どもでしたが、いつも「このあと、またさよならがくる」と、ドライな感覚でいたように思います。ですから、心のどこかで「友達とも仲よくなりすぎないように」とバリアのようなものを張っていたかもしれません。仲よしと別れるのはつらいですから、できるだけ傷つかないように。当時は意識していませんでしたが、今振り返ってみると「ああ、そうだったのかもしれない」と感じます。

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三宅智佳
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