栄養教諭の谷西真理子さんが「もう調理はできない」とあきらめかけたとき、調理員の森下貴子さんの「先生、おいしいものを作って帰ろう」という一言で吹っ切れたという。夜半、2人で食材をホテルに持ち込んで献立を再検討し、計量して翌日の実技に備えた。

 谷西さんは「食材が届かないというアクシデントがありましたが、みなさんのおかげでなんとかなりました。ただおいしい物を作りたいという思いだった」、森下さんは「人生でこんなに華やかな事が起こったことはありませんでした。これからも子どもたちのために、おいしい給食を作り続けたい」と、語っている。

 馬場理事長は「ほとんどの審査員はこのアクシデントを知らされておらず、審査に温情は入っていない。予定外の食材で臨機応変に作った作品が高く評価されたのは、実力を持っている証明」と、話す。

 審査員からは「食材の良さを生かし、摂取が難しい栄養も多様な食材を使うことで充足している」と、評価された。

 なお3次審査に残った24校(施設)のうち、23校(施設)が並列して行われた「食育授業コンテスト」に参加。食育授業を再現した5分間のビデオなどで審査を行い、岩手県の遠野市学校給食センターが最優秀賞に選ばれた。

 訪日した外国人観光客が、日本の食事をSNSで発信したり、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたりするなど、日本の食は評価が高い。学校給食は、日本の食文化の一端を担っているだろう。

【写真】全国給食甲子園、決勝に残った12校の献立はこちら(全12枚)

(取材・文/柿崎明子 写真提供/全国学校給食甲子園)

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ライター 柿崎明子
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