「給食や昼休みの時間が短くなりました。また、6時間の授業となると下校時間は午後3時半ごろになりますから、放課後に学校で遊ぶという時間はなくなっています。実は学校の先生が子どもたちのよさを発見したり、逆に子どもたちが発するSOSに気づいたりするのは休み時間や放課後など子どもたちがリラックスしているときなのです。先生が子どもたちと遊んだり、雑談したりする時間が重要なのですが、いまのカリキュラムではその時間が奪われています」
多くの教員が「いまの標準時数は子どもに合っていない」と回答
大森さんの研究室では23年7~9月、全国の公立小学校の教員を対象とした「標準時数の変遷に関する調査」を行っています。5期にわたる教育課程基準の改訂を経験した教員の89%が、17年の教育課程による標準時数が「やや合っていなかった」「合っていなかった」と答えています。4期経験の教員では90%が同様の回答をしています。
自由記述では「低学年の5時間、高学年の6時間の多さが子どもたちにゆとりをなくしています」「1日6時間の授業に苦痛を感じる児童もいます」などの回答が寄せられています。いまの授業時数が子どもの大きな負担となっていることをほとんどの教員が共有しているわけです。
学校の時数をもう一度「子ども視点」で考え直すべき
では、子どもに合った授業時数はどのようなものなのでしょうか。こうした調査結果などを踏まえ、大森さんはこう提案します。
「理想とするのは1日5時間、週25時間、年875時間です」
平日1日5時間は「第1次ゆとり教育」といわれた1977年と1989年の基準当時の水準に近いものです。いまは国が教育課程基準を定め、学校が授業数など実際の教育課程を決めています。大森さんは国の基準に代わり、民間から授業時数の「ガイドライン」を提示することの必要性を指摘します。
「いまの基準は大人が『子どもにこういう力をつけてほしい』という観点から決められています。それを理解できないわけではないのですが、子どもが豊かな人生を送るためにはどのような教育内容が一番いいのか、もう一度“子ども視点”で考え直すべきではないでしょうか。そのためにも教育学者、学校教員など民間からのガイドラインの提示が重要になってくると考えています」
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