食欲の秋ですが、記録的な猛暑などの影響を受け、お米や野菜といった食材の値段が上昇しています。学校給食の献立を考えるのも難しくなっているようです。その学校給食について興味深い調査結果が文部科学省から公表されました。全国の自治体のうち約30%の自治体が2023年度中に公立小中学校の全員に対して学校給食費の無償化を実施しているといいます(23年9月1日時点。予定を含む)。学校給食開始当初から無償化を続けている山口県和木町は、どのように無償化を実現したのでしょうか。有償か無償か以前に忘れてはいけない給食費をめぐる論点についても、専門家に聞きました。
【写真】給食無償化を70年以上続ける和木町の、秋の給食メニューこちら!給食費は全国で約1.4倍もの開きがある
コロナ禍で学校が一斉休校になったとき、給食のありがたさを実感した保護者も多かったでしょう。しかし、給食費は決して安いものではありません。文部科学省が今年6月に発表した学校給食に関する実態調査結果によれば、公立小学校の給食費(保護者が支払った額ではなく、食材費に相当する金額)の月額は全国平均で4688円。年間では約5万6000円にもなります。都道府県別にみると、最も高いのが福島県の月額5314円、最も安いのは滋賀県の同3933円で約1.4倍の差があります。
給食費(食材費相当分)は1954年成立の学校給食法で「保護者負担」とされ、生活保護など経済的に苦しい家庭については無償とされてきました。ただ、保護者の経済的な負担の軽減、子育て支援、少子化対策などを目的に無償化を実施する自治体が増えています。全国の自治体のうち約30%にあたる547自治体が公立小中学校に対し完全無償化を実施し、2017年度調査時の76自治体(約4.4%)から大幅に増加していることがわかります。
政府は昨年12月に閣議決定された「子ども未来戦略」で、学校給食無償化に向けて自治体の取り組みなどを調査し、具体的な方策を検討するとしています。前述の文科省調査はこれを受けたものです。
山口県和木町で給食費を無償化できている理由
学校給食が始まった当初からずっと給食費の無償化を続けている自治体があります。山口県の最東端に位置する人口約5800人の和木町です。同町では食育にも力を入れ、毎日、給食の際に校内放送でメニューの紹介をしているそうです。9月20日はお彼岸にちなんだメニューで、おはぎが出ましたが、「ぼたもち」と「おはぎ」の違いが放送されたといいます。
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