文科省の調査によると、「CEFR A1レベル(=英検3級相当)」以上の実力をもつ中学3年生の割合は、さいたま市が5年連続全国1位。全国平均50.0%のところ、88.4%と突出しています。高い英語力の背景にあるといわれるのが、小学1年生から中学3年生までの一貫カリキュラム「グローバル・スタディ」です。市立谷田小学校6年の英語の授業を取材しました。「AERA English特別号 英語に強くなる小学校選び 2025」(朝日新聞出版)から紹介します。

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英語で「おすすめ」をプレゼンテーション            

 この日の「グローバル・スタディ」のテーマは「外国の人に日本やさいたま市でおすすめしたいものについて話したり、紹介文を書いたりしよう」だ。

 「hot springs」「hina dolls」「bonsai trees」―。子どもたちはALT(外国語指導助手)のジョブ・ロメシオ・ワイズさんが扮した外国人観光客に、英語で「おすすめ」をプレゼンテーションする。言葉を発するだけでなく、体を使って表現していた。その後、1人1台あるパソコンで調べながら紹介文を完成させた。

 グローバル・スタディ科専科の釘田理恵子教諭が授業を振り返る。

「日本やさいたま市を紹介する動画制作の一環となる授業です。前半では英語に慣れることに主眼を置き、後半では原稿となる紹介文を作成するよう授業を構成しました」

 子どもたちの笑顔が印象的な授業だった。ALTのジョブさんもこう話す。

「子どもたちが楽しみながら英語を学べるよう、いつも工夫しています」

グローバル・スタディ科専科の釘田教諭(左)とALTのジョブさん。「ずっと英語を好きでいてもらいたい」と釘田教諭。

小中9年間の一貫したカリキュラムが特長

 さいたま市は2016年度から「グローバル・スタディ」を実施している。小学1年から中学3年までの一貫したカリキュラムが大きな特長だ。例えば、小学1、2年では「英語に慣れ親しむ授業」を実施。5、6年では「コミュニケーション活動(「話す」「聞く」「読む」「書く」)を中心とした授業」を行っている。

教材は市独自のもの。ワーキンググループの教員のアイデアを生かして作成し、常に検証や改訂を行っている。

 さいたま市教育委員会教育課程指導課国際教育係長の伊澤幸恵さんが話す。

「一貫したカリキュラムがあることで、小学校教員は中学の英語でどのような勉強をするかがわかります。中学校教員は小学6年までの学びの到達度を理解していますから、小学校から中学校への学びの移行がスムーズにできます」

「グローバル・スタディ」の授業は、低学年で35時間(1年生は34時間)、中学年で70時間、高学年で105時間実施している。授業だけでなく、朝学習の時間を使って英語を学ぶなど、各学年とも英語の授業時数は全国平均より約35時間も多くなっている。

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