多くの小学校では毎日6時間の授業で子どもたちは疲れ、集中力が続かない、トラブルが多発する。教員は授業の準備や休憩時間が十分に取れずに悲鳴を上げる――。こうした原因の一つに「カリキュラム・オーバーロード(詰め込みすぎカリキュラム)」があると言われています。現場の小学校教員とともに、授業の時数を研究する東京学芸大学教授の大森直樹さんに、なぜこのような状態が起きているのか、親ができることなどを聞きました。※別記事<6時間授業、授業内容増で子どもも教員も疲弊 現役小学校教員が語る「詰め込みすぎカリキュラム」の実態>から続く
【表】ベテラン教員は今の時数をどう思っている? 調査結果はこちら(ほか1枚)いまの授業数は近現代の歴史のなかで最も多い
授業の時数や勉強する内容が多く、子どもに負担がかかり過ぎていることを示す「カリキュラム・オーバーロード」という言葉が使われ始めたのはここ数年です。しかし、教育現場で子どもや教員が疲弊する状態はそれよりずっと以前から続いてきました。
なぜこのようなことになってしまったのか、その背景を考えてみたいと思います。
「小学校の平日1日の授業時数は、日本の近現代の歴史のなかでいまが最も多くなっているのです」
そう話すのは東京学芸大学現職教員支援センター機構教授の大森直樹さんです。小2の平日1日の授業時数は5.2コマ、小4・小6は6コマです。これは「肥大なカリキュラム」といわれ、子どもたちが授業や内容の多さに苦しんでいた1960年代を上回るもので、2020年ごろから「カリキュラム・オーバーロード」という言葉が使われるようになりました。
17年に国の学習指導要領が改訂され、小学校では20年がその実施初年度にあたります。時を同じくしてカリキュラム・オーバーロードが言われだしました。17年の学習指導要領では何が変わったのでしょうか。
「簡単にいうと、教育内容で削減されたものは一つもなく、むしろ積み増しばかりが行われました」(大森さん)
大森さんは小中の教員約50人との共同研究で、新旧学習指導要領の一言一句を比較したといいます。その結果、削減されたものは一つもなく、例えば、小学6年間で覚えなければならない漢字は20文字増えたことがわかったということです。
さらに、大きな変化としては小3・4に「外国語活動」、小5・6で「外国語科」が新設されました。その結果、授業時数は大きく増えました。また「道徳科」も新しく設けられ(2015年の学習指導要領の一部改正)、プログラミング学習も必修化され、現場の負担は増え続けています。
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