そんな中でも、親はあきらめずに、変わらずに向き合ってくれていました。歌のお兄さんになかなか近づけずに止まりそうになったときも、つねに僕を信じて見守ってくれていました。だから、僕も進むことができたのだと思います。

 僕が歌のお兄さんを卒業してから、休みがとれないほど忙しくなった時期がありました。実家にもなかなか連絡ができなくなって……。そんなとき、イベントの会場に両親の姿を見つけたんです。大雨なのに、会場の外で遠くから僕を見ていてくれました。栄養ドリンクや食品をたくさん持って……。思い出すと、ちょっと泣けてきてしまうのですが(笑)。

 こういうことって、大人になって気づくものですよね。とくに、自分が親になって、「親ってすごかったんだな」としみじみ感じます。歌うときの想像力のふくらませ方や、絵本を読むときの感情のこめ方……今思うと、全部自分の両親が教えてくれたことが基本にあります。

 けんかもたくさんしましたが、親子げんかはしてもいいと思うのです。でも、子どもは「どんなときも親がいてくれる」という安心感をどこかで感じているんですね。どんなことがあっても「親がいてくれる」と。自分がそういうふうに感じられる瞬間をたくさん持っていることに、本当に感謝しています。そして、今度は自分が子どもたちや自分の子どもにも「やってあげたい」と思いますね。

 心に余裕が出てきた今、両親と話したくなるんです。あんなに反抗していたのに(笑)。だから、親御さんもお子さんに「もう!」と思う時期があっても、変わらず見守ってあげてほしいです。いつか成長した時に、親の気持ちはきっと伝わる。僕も、そうしようと思っています。

※前編<元歌のお兄さん・横山だいすけが語る子ども時代の“挫折”「親以外から『歌がうまい』と言われたことがなかった」>から続く

(取材・文/三宅智佳)

【前編】元歌のお兄さん・横山だいすけが語る子ども時代の“挫折”「親以外から『歌がうまい』と言われたことがなかった」
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